/

そーせい、レビー小体型認知症薬開発へ

そーせいグループは2018年内に日本で、認知症のタイプとして患者が2番目に多い「レビー小体型」を対象に、治療薬の第2相臨床試験(治験)を始める。世界製薬大手と提携して薬を実用化するラインアップとは別に、独自開発で発売を目指す重要品目と位置づける。将来、年間で最大550億円の売上高にしたいという。

日本のレビー小体型認知症の患者は92万人おり、25年には150万人に増えると見込まれている。認知症は高齢化が進む中で一段と重要なテーマとなっているが、薬の開発は難しくあまり進んでこなかった。

レビー小体型の認知症は、たんぱく質が神経に付着することで、神経上の電気信号の伝達が阻害されることに起因する。これによって神経間の情報伝達物質アセチルコリンが減って、様々な症状をもたらす。

アセチルコリンが神経と神経の間を伝わるとき、受容体と呼ばれるたんぱく質がアセチルコリンを受け止める。そーせいグループが開発する薬の候補化合物は、アセチルコリンと似た働きを持ち、アセチルコリンを代用することで情報伝達を正常な形に近づける。

そーせいグループの中核会社、そーせい(東京・千代田)の安井忠良社長は「認知症薬にはアセチルコリンを増やす効能のものがあるが、記憶以外の受容体に作用してしまう可能性があった」と説明する。そーせいグループの化合物は、記憶に関わる受容体を選んで作用するという。

同社のピーター・ベインズ最高経営責任者(CEO)は「受容体の構造を立体的に解析し、適切な候補物質をデザインできるところが当社の強み」と説明している。

アセチルコリンと受容体は、鍵と鍵穴のような関係にある。鍵穴側の受容体の構造をより精緻に知ることで、そこにしっかりおさまる鍵としてのアセチルコリン代替物を作れることになる。

ベインズCEOは、同社が原子レベルで化合物の構造をデザインできる技術を持つ理由はそーせいグループ傘下に07年設立の英ヘプタレス・セラピューティクスがあるからだと説明する。ヘプタレスは、体内での役割が解明されていても立体の構造をとらえることが技術的に困難なため開発ターゲットになりにくいとされてきたある種の受容体に対し、立体構造を解明できる技術を持つ。

同社の共同創立者、リチャード・ヘンダーソン氏は17年10月、生物の体内にあるたんぱく質の立体構造を詳しく調べる極低温電子顕微鏡を開発した功績が認められノーベル化学賞を受賞した。

そーせいグループはレビー小体型認知症薬について、18年に日本で第2相の治験を始め、20年代前半の発売を見込んでいる。将来300億~550億円の年間売上高になると期待している。日本以外のグローバルでの開発・販売は引き続き提携先のアラガンが担う。

そーせいグループの17年4~9月期連結の売上高は前年同期比66.5%減の53億円、営業利益は88.2%減の14億円となっており、通期見通しは公表していない。同社の業績は、スイスのノバルティスファーマなど提携先の開発の進捗に応じて受け取るマイルストン収益に大きく左右される。16年はアラガンとの大型契約に基づいて契約一時金を受け取ったため、その反動が出ている。

現在の開発パイプラインにはすでに認知症薬が入っており、アラガンと提携してアルツハイマー型を対象に第1相まで進めている品目がある。これらにレビー小体型が加わることによって、開発している品目がカバーする認知症患者の範囲は7割に広がっている。

そーせいグループは提携先をノバルティスほか英アストラゼネカ、米ファイザー、イスラエルのテバ・ファーマシューティカル・インダストリーズなどに広げているが、単独開発も急ぐ方針。

ベインズCEOは「我々はメガファーマではない。独自技術が発揮できる領域に注力する」と話す。神経系や消化器系を考えている。現在、レビー小体型認知症以外に、治験の前段階にある神経系疾患薬などを開発品目として持っている。

ベインズCEOは米アムジェンや米ギリアド・サイエンシズを例に、小さいベンチャーにすぎなかったこうした著名バイオ企業と同じ道を歩みたいと話す。その点で、レビー小体型認知症の独自開発品の果たす役割は大きい。

▼レビー小体型認知症 三大認知症のひとつ。患者数の50%を占めるアルツハイマー型に次いで20%ある。3番目の脳血管性は15%。たんぱく質のレビー小体が脳にたまり、神経細胞が減る進行性の病気。

実際にはいない人が見える幻視や妄想、うつ、体や表情が硬くなるパーキンソン症状、睡眠時の異常言動などをもたらす。日本では2014年にエーザイの「アリセプト」が唯一の治療薬として承認された。

(企業報道部 安西明秀)

[日経産業新聞2017年11月28日付]

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連企業・業界

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン