2019年4月25日(木)

大日本住友 精神疾患分野でインシリコ創薬

2017/11/25 6:30
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大日本住友製薬はコンピューターなどで新薬候補の化合物を効率良く絞るインシリコ創薬の手法で、屋台骨である精神・神経疾患の薬の開発を急いでいる。軸になるのはこの手法を活用している米国、スコットランドベンチャーとの協業。10の化合物を生みだし、うち2つは米国で臨床試験(治験)を進めている。

大日本住友は精神・神経疾患分野の開発に力を入れている

大日本住友は精神・神経疾患分野の開発に力を入れている

インシリコ創薬はスーパーコンピューターや人工知能を使い、病気の原因を阻害するような化合物を見つける技術。動物実験などを繰り返す一般の化合物探索と比べ、実験の回数や時間を減らせる。多くの製薬会社が利用し始めている。

大日本住友製薬が治験に入っている新薬候補は、幻覚や妄想が出る統合失調症と、うつとそうを繰り返す双極性障害を対象とした2つ。統合失調症の薬は米国で、2016年12月から国際共同治験を始めた。双極性障害も、米国で第1相治験に入っている。

米子会社のサノビオンがバイオベンチャー、米サイコジェニクスとの共同開発でこの2種類の候補を生みだした。

サイコジェニクスは、マウスの不安やうつといった精神・神経に関する複雑な行動データを豊富に持っている。

さまざまな化合物を投与されたマウスが、実験用の迷路のなかで立ち止まる、震える、ほおをかくなどといった動作を高性能のカメラでとらえて、行動があらわす意味を特定する。これらの動作は、通常の観察では判別が難しい。

サイコジェニクスはマウスに与えた化合物とその結果出てくる行動についてのアルゴリズム(計算手法)を開発してきた。化合物のデータさえあれば、マウスへの効き目を予測できる。

薬の開発は、まず動物で効果を調べてからヒトの治験に入っていく。ただ、精神・神経疾患分野は、動物から人間と同じ類いのデータを集めることが難しく、人間の治験に進むまでに時間がかかる。大日本住友はサイコジェニクスの力を借りて、動物試験のハードルを低くした。

原田秀幸研究本部長は、インシリコ創薬の効果について「開発のコストとスピードを2~3割効率化できる」と語っている。

大日本住友はスコットランドのエクセンシアとも、共同開発に取り組んでいる。化合物について、合成の手順とそれにかかる時間などのコンピューターシミュレーション技術を持つ。

一般に新薬候補の発見まで数年から10年かかるとされる。エクセンシアとの開発ではわずか1年で第1弾の候補を発見した。現在も精神・神経疾患分野でシミュレーションを続けている。

大日本住友は日本での開発でも、インシリコ創薬の手法を活用している。理化学研究所が保有している世界有数のスーパーコンピューター「京」を使い、神経伝達物質やホルモンの動きを調べ始めた。

同社はコンピューターを使った化合物の探索や結晶構造の分析を、国内製薬の中で先行して取り組んできた。

新しいアルゴリズムが出てきたり、コンピューターの性能が上がったりして、インシリコ創薬を以前よりも活用しやすくなっている。

インシリコ創薬の重要性が増している理由には開発コストの増加もある。医薬品の開発が成功する確率は3万分の1とも言われ、1つの新薬の発売までに数百億~1千億円近い投資が必要になる。開発費用が高ければ高いほど、製品価格も高くなる。

同社の精神・神経疾患分野の大型薬「ラツーダ」は世界での売上高が約1700億円にのぼり、会社全体の4割を占めている。協業によるインシリコ創薬の手法の導入は、強みを持つ分野をさらに効率化する取り組みとなる。

原田氏は製剤など汎用の技術は外注するとともに「研究現場では最先端の技術を活用していく」と語っており、iPS細胞の利用などと並んでスパコンやアルゴリズムの技術を積極的に創薬に取り入れていく考えを示している。

(大阪経済部 高田倫志)

[日経産業新聞2017年11月21日付]

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