2019年8月26日(月)

大阪万博へ3カ国と競う 25年開催国決定まで1年

2017/11/25 6:00
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日本が大阪招致を目指す2025年国際博覧会(万博)の開催国決定が1年後に迫った。実現すれば、05年の愛知から数えて20年ぶり、1970年の大阪万博から55年ぶりの開催となる。大阪府・市は統合型リゾート(IR)の整備と合わせ、経済活性化の起爆剤としたい考えだ。

テーマに「いのち輝く未来社会のデザイン」を掲げた日本。仮想現実(VR)やiPS細胞による治療など先端技術を体験できる構想を打ち出している。

15日にパリで開かれた博覧会国際事務局(BIE)総会のプレゼンテーションでは、途上国支援に取り組む女性や関西にゆかりのあるルワンダ人男性がスピーチ。開催国を選ぶBIE加盟170カ国のうち67カ国を占めるアジア・アフリカ票の掘り起こしに努めた。

府市は政府、財界と連携した「オールジャパン」の態勢で臨む構えだが、勝ち抜くのは容易ではない。競合するのはフランス、ロシア、アゼルバイジャンの各都市。なかでもパリで過去6回の開催実績を誇り、真っ先に名乗りを上げたフランスは招致レースを先行しているとの見方が強い。

開催国は18年1~3月のBIEによる現地視察、6月総会のプレゼンを経て、11月総会の最終プレゼン後に行われる加盟国の投票で決まる。支持を集めるうえで重要となるのは「各国が何を得ることができるのか」(BIE幹部)。日本には魅力ある世界観の発信が一段と求められそうだ。

■松井一郎・大阪府知事 「人」に焦点、世界の課題解決

松井一郎大阪府知事

松井一郎大阪府知事

開催国の決定まで1年となり、招致合戦は一段と熱を帯びる。日本の万博誘致委員会の会長代行を務める松井一郎大阪府知事と、フランス政府内で招致活動を推進するパスカル・ラミー博覧会担当省庁間代表の2人に、招致への意気込みなどを聞いた。

――大阪で再び万博を開く狙いは。

「2020年の東京五輪・パラリンピック後、日本経済の安定成長には国際イベントが必要だ。大阪には万博を通じて世界の課題を解決する潜在力がある」

「1970年の大阪万博は国威発揚が目的の『展示型』だったが、今回目指すのは来場者が技術革新を体験できる『参加型』。人は最後まで自立して人生を楽しむのが究極の望み。それを実現する技術革新を示すのが25年の大阪万博だ」

――IRとの相乗効果をどうみる。

「万博会場の隣で開設を予定するIRは大阪の経済活性化に必要なツール。1兆円の投資が見込まれ、訪日客の増加が一段と期待できる。万博で新しい科学分野のモノとサービスを、IRでエンターテインメントを提供する。両方が重なり合えば、さらに人を呼び込める大阪になる」

――BIE加盟国の票獲得に向けた取り組みは。

「おもてなしの心にあふれた関西の魅力を丁寧に説明していきながら、万博の姿をより具体化したい。(万博が実現すれば)先進国でない国も出展しやすいよう、準備期間を含めて公営住宅などを住居として提供することも考えている」

――フランスは競争相手として手ごわいが。

「我々は『人』に焦点を当てて技術革新を起こそうとしており、フランスのテーマは『環境』。強敵だと思うが、互いの理念は少し違う。大阪は世界初の『課題解決型』の万博にする」

■フランス誘致担当幹部 パスカル・ラミー氏 「知識と環境の調和」広める

ラミー仏博覧会担当省庁間代表

ラミー仏博覧会担当省庁間代表

――競合3カ国をどう見るか。

「25人のチームが時間をかけて各国の構想案を分析している。現時点では全ての国がライバルだ」

――フランスの強みは。

「パリの知名度が最大の強みだ。国としては地理・経済・文化的に欧州だけでなく、北米やアフリカとも密接な関係にある」

――テーマや会場のアピールポイントは。

「開催予定地のサクレーはパリ近郊。インフラや交通網の開発が進み、研究施設の一大集積地でもある」

「多くの若者から意見を募り、彼らは未来への希望として『知識』を、恐れとして『環境問題』を挙げた。組み合わせたテーマが『共有すべき知見、守るべき地球』だ」

――25年万博で残したいレガシー(遺産)は何か。

「『知識と環境の調和』という理念を世界に波及させるとともに、各国の人々が集まる場所として、地球を模した球体施設を引き継ぎたい」

――国民の受け止めは。

「世論調査では70~80%が好意的な意見を持っている。24年にパリ五輪が開かれ、フランスの魅力を売り込む絶好の機会。テレビやインターネットなどで五輪を視聴する人は40億人とされる。1%に当たる人が来場すると想定している」

――パリ市内でも万博関連のポスターなどを見かけない。機運醸成の方法は。

「戦術は秘密だが、情報発信はSNSの時代。ツイッターやフェイスブックは活用していく」

■愛知万博・政府代表「大阪はいつまで眠っているのか」

日本が直近で開催した万博は2005年の愛・地球博(愛知万博)。当時、通産省(現経済産業省)の国際博覧会推進室長を務め、政府代表だった松尾隆之氏は大阪万博の実現に向け、市民の盛り上がりとスペイン、ポルトガル両国の攻略が鍵を握ると指摘した。

愛知万博の開催が決まったのは、1997年6月にモナコで開かれたBIE総会。計画案の策定や招致活動などに携わった松尾氏は、招致成功の要因を「市民の盛り上がりが大きかった」と言い切る。

愛知万博のテーマの柱は環境。支持する市民が川を浄化する運動を始めたり、小中学生が里山に植林をしたりしていた。BIEが現地視察などに基づいてまとめる報告書は、各国が開催国を選ぶうえでの重要な参考資料となり「市民の姿はBIEの調査団にも十分植え付けられた」と振り返る。

一方、今回の招致では市民の機運醸成が課題となっている。松尾氏は「非常に危機感を覚える。いつまで大阪は眠っているのか」と強調。「行政からのトップダウンによる推進ではなく、市民や企業がアイデアを出すといったボトムアップ型での活動が必要だ」と指摘する。

加盟国へのアピールのあり方については、テーマに掲げた「いのち」を各国の立場に立って訴えることを重視する。「例えば、近い将来、高齢社会に突入する中国やインドには、医療やライフサイエンスの一大拠点である関西が貢献できる可能性を、平均寿命の短いアフリカには衛生管理や感染症対策などを強調すべきだ」という。

アジアやアフリカに重点を置いた票の積み上げに懸命な日本。「まずスペインやポルトガルを攻めるのはどうか。アフリカ諸国とつながりがあり、南米とは密接な関係だ」とアドバイスしている。

■1位得票が3分の2未満なら最下位外し再投票、最後は決選投票に

25年万博の開催国は18年11月のBIE総会で加盟国が投票して決める。立候補した4カ国のいずれかが、投票総数の3分の2の票を得れば開催国となるが、達しなかった場合は最下位を外して投票を繰り返す。最後は決選投票になる。

11月現在の加盟国は170カ国。アフリカが49カ国で最も多く、欧州47カ国が続く。中南米の30カ国、アジア18カ国、オセアニア11カ国の影響力も無視できない。

日本はアジア、アフリカ各国に照準を定めた支持獲得を急いでおり、政府は政府開発援助(ODA)の実績などもテコに、国際会議の場も生かして外交努力を重ねる方針。フランスは地の利がある欧州を中心に強みを持つとされる。

出遅れ感のあったロシアやアゼルバイジャンも構想案を固め、今後は開催予定地の文化や歴史をアピールしながら攻勢を強めるとみられる。日本の誘致委員会関係者は「いずれも侮れないライバルだが、1回目の投票で勝つという意気込みで戦略を練っていく」と話している。

 グラフィックとレイアウトは内山克彦、田尻貴雄、松本正伸が、取材は堀越正喜、川崎航が、それぞれ担当した。

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