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狭まる包囲網、飛躍の鍵は思考力 卓球・平野美宇(下)

平野美宇の今年の国際試合(団体戦の試合を含む)の成績は41戦して25勝16敗。このうち対中国となると3勝12敗で、3連勝して優勝した4月のアジア選手権(中国)以降、実に10連敗だ。

打倒中国。だから他の選手には勝って当たり前――。そう思って練習を重ねてきたから、9月のアジアカップ(インド)で今年初めて香港の選手に敗れると、張り詰めていた糸が切れた。

中国以外の選手に敗れ「やめたい」とまで思いつめた=国際卓球連盟提供・共同

「中国選手以外に負けてはいけないと思っていた。それがいけなかったのかな」。気持ちは空回りして思うようなプレーができず、大粒の涙をこぼした。「卓球がつまらない。やめたい」とまで思いつめたという。

プレーを研究され負け続きに

自分のプレーが研究されている。予兆は銅メダルに輝いた5~6月の世界選手権(ドイツ)からあった。五輪金メダルの丁寧(中国)に準決勝で敗れ、「中国選手は嫌な所をどんどん突いてくる。試合中に切り替えないと難しい」と痛感した。

指導するエリートアカデミー女子監督の中沢鋭も対応力の向上を口酸っぱく求めてきた。「今まではコーチ頼みのところがあったが、組み立てや戦術を自分でもっと考える必要がある」

卓球の試合中、台で相手とボールを打ち合う時間は全体の2割程度だ。タイムアウトは試合中に1人1回だが、コート内のボールは歩いて拾うし、6点ごとにタオルを使う時間もある。一度やられるとズルズル最後まで立ち直れない。そんな試合を減らすため、これまで以上に思考力を意識した試合運びを目指す。

悪い流れはなかなか断ち切れず、前回覇者として臨んだ10月末のワールドカップ(W杯、カナダ)の準決勝では中国選手に完敗。3位決定戦でも昨年の決勝で勝っている台湾の鄭怡静に敗れた。

「(鄭は)前はフォアだけだったけど、バックもレシーブもうまかった。中国以外の選手もレベルを上げている。それより自分が上にいかないとこういう結果になる」。着実に狭まる包囲網。帰国後、平野は冷静に立ち位置を分析したが、W杯で勝った2戦では成長の一端も垣間見えた。

スウェーデンと台湾の選手を相手にリードしながら連続失点した場面。自ら審判にタイムアウトを告げ、ベンチでファイルに目を落とす。タイムアウト明けには、きっちりゲームを取り切った。

「強豪相手に完全に流れを変えられたことはまだないけど、少しずつやっていきたい」とは平野の自己評価。中沢も「前から『タイムは取りたい時に取っていい』と伝えていたが、これまではほとんど私。その点は進化したし、経験を積めばもっとよくなる」と話す。

7歳で宣言した「五輪で金メダル」。自分の首にかかる姿は「たまに」イメージするというが、表情を引き締めてこう加えた。「まずは夢を見ないで、一つ一つの試合で成績を残すことが東京につながる。一日を大切に頑張っていくしかない」。20歳で迎える東京五輪。伸びしろはまだ十分にあるはずだ。(敬称略)

〔日本経済新聞夕刊11月22日掲載〕

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