中性子星の合体、地球規模で追跡 重力波で観測
日経サイエンス

2017/11/25 6:30
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天文学史に残る大発見が10月16日、米ワシントンのナショナル・プレスクラブで各国のメディアを前に発表された。コンパクトな超高密度の天体「中性子星」2つからなる連星が合体する様子が重力波によって初めて観測されたという内容で、人類が初めて目にした天体現象だった。

この中性子星の合体を米国にある重力波望遠鏡LIGO(ライゴ)などが検出したのは8月17日のこと。以来2カ月間、その事実は一般には伏せられたが、全世界の主だった天文台には速報され、中性子星の合体現場の様子を捉えることに成功した。

中性子星どうしが合体する際に強い重力波が放射され、合体直後は物質がジェットのように噴出する。画像はイメージ。画像提供はNSF/LIGO/Sonoma State University/A. Simonnet

中性子星どうしが合体する際に強い重力波が放射され、合体直後は物質がジェットのように噴出する。画像はイメージ。画像提供はNSF/LIGO/Sonoma State University/A. Simonnet

重力波は時空のゆがみが、さざ波のように広がる現象だ。8月17日の日本時間午後9時39分すぎ,かなり強い重力波が地球に到来し始め、午後9時41分少し前から急激に強まったところでふっと途絶えた。

この重力波を克明に観測していたのがLIGOだ。記録された重力波の波形は、シミュレーション研究から予想されていた中性子星の合体直前に生じるパターンとよく合致したため、同日午後9時50分ごろ、各国に散らばる研究メンバーに速報された。

すぐにデータの解析作業が始まり、南半球からよく見える「うみへび座」のへびの尾の方向から放射されたことがわかった。

日付が変わって8月18日午前2時55分ごろ、この情報が世界各地の天文台に速報された。ちょうど夜を迎えていた南米アンデス山脈の高地にある複数の天文台は、中性子星の合体で生じた新天体の探索を始めた。複数の宇宙望遠鏡や国際宇宙ステーションの観測装置も、問題の天球領域に焦点を合わせた。

重力波検出から約11時間後の8月18日午前8時33分。南米チリにある米カーネギー研究所のラスカンパナス天文台で、口径1メートルのスウォープ望遠鏡を用いて探索していた米カリフォルニア大学サンタクルーズ校のチームが、問題の天球領域にある銀河「NGC4993」の外縁部で、新たに輝き始めた未知の天体を発見した。その後1時間もしないうちにさらに5グループが同じ新天体を独立に発見した。

8月18日午前10時5分、スウォープ望遠鏡が発見した新天体の情報が世界の天文台に速報された。すると南米に続いて夜を迎えた南半球のニュージーランドやオーストラリアの望遠鏡で追跡観測が始まり、続いて南アフリカ、そして再び南米と、夜に入った天文台でリレーする形で24時間態勢の観測が続くことになった。

北半球からは見えにくい位置だったが、ハワイでも日没後30分程度は観測でき、日本のすばる望遠鏡や米国のケック望遠鏡など口径10メートル級の大望遠鏡による観測が実施された。

地上と宇宙の望遠鏡を総動員し、まさにオール地球で追いかけたスーパーイベントだった。(詳細は25日発売の日経サイエンス1月号に掲載)

日経サイエンス 2018年1月号

著者 :
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 1,440円 (税込み)

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