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歴史的株高を聞く(下)「過熱こんなものではない」

日経平均株価は7日に1992年1月以来、約26年ぶりの高値を付けた。その後も高値圏でもみ合う。日本企業の評価はどう変わったのか。歴史的な株高の背景や今後の展望を市場関係者に聞いた。

 「人材育てPBRの向上を」 一橋大学大学院特任教授の伊藤邦雄氏

――日本株が26年ぶりの水準を回復しました。

一橋大学大学院特任教授の伊藤邦雄氏

「バブルでも偶然でもない。海外投資家が日本企業の変化を実感し始めたからだ。彼らからはこの1~2年、『企業の投資家と向き合う姿勢が改善した』と聞く。対話の質が高まり、経営に反映されるようになってきた」

「これまでの日本企業は『二枚舌経営』。株主の前では礼儀正しくても、実際には株主重視の経営にはなっていなかった。それが今や、投資家が重視する自己資本利益率(ROE)や投下資本利益率(ROIC)を経営指標に取り入れるのが当たり前になった」

――2014年に「日本企業はROEで8%超を目指せ」との報告書をまとめました。

「足元で平均ROEは8%を超えた。売上高利益率が改善したからだ。次の焦点は不採算事業の切り離し。赤字部門だけでなく、収益性が資本コストを下回る部門をすべて見直すべきだ。欧米企業のROEは10%を超える。日本企業も努力が必要だ」

――株価上昇を持続させるには。

「PBR(株価純資産倍率)を高めるべきだ。日本の平均PBRは1.0倍前後と2倍台の米国に劣る。この差は人材への投資や研究開発の規模の違い。米アップルやグーグルは研究開発に力を入れている。貸借対照表(バランスシート)に載らない、目に見えない資産から高い価値を生み、市場の評価につなげる。米企業の株価が高いのはこれができているからだ」

「人材はコストではなく資産だ。人材を育成しないと企業の競争力は高まっていかない。モノづくりに専念し、バランスシートを拡大させる経営は時代遅れ。人づくりなど、見えない資産を重視する経営へと発想を切り替え、持続的な成長につなげるべきだ」

(聞き手は植出勇輝)

 一橋大教授や副学長を経て現職。東レなどの社外取締役も務める。2014年に政府の研究会でROE経営の重要性を打ち出した「伊藤リポート」をまとめた。65歳。

 「過熱こんなものではない」 いちよし証券会長の武樋政司氏

――バブル崩壊後の高値を付けました。

いちよし証券会長の武樋政司氏

「遅すぎるくらい。やっと、という気持ちだ。企業業績や景気の回復がようやく株価に反映されてきた。あと3年は日本の景気拡大が続くとみており、企業収益を考慮すると2019年末にも2万9000円まで上昇してもおかしくないだろう」

――バブル期と比べ、市場の雰囲気は違いますか。

「当時は熱狂的相場で異常だった。不動産価格が必ず値上がりするという『土地神話』も信仰され、バブルに浮かれていた。それに比べると今の相場上昇はまっとうすぎて、逆に盛り上がりに欠ける。過熱とはこんなものではない」

――個人投資家の動きをどうみますか。

「個人はこの上昇相場で売りまくっており、マネー・リザーブ・ファンド(MRF)に積み上がった待機資金は過去最高水準だ。次の投資機会をうかがっている顧客が多い。『相場は懐疑の中で育つ』というが、今がまさにその時。その意味でも足元の株価水準はまだ高くない」

「『貯蓄から資産形成』へと本格的に進む兆しも出てきた。マイナス金利時代に預金に頼れず、長生きしてお金がかかる場合もある。資産運用に取り組まざるを得ない時代になった」

――強みの中小型株分野は大型株と比べどうですか。

「17日の設定で販売した中小型株の新ファンドは2週間で約100億円が集まるなど、個人の関心は高い。景気回復局面では中小型株が優位となる相場は続きそうだ。中長期的に技術革新などによって業績拡大が見込める企業は多い」

「中小型株人気が強い一方、高配当株ニーズもなお高い。日本郵政日本たばこ産業キヤノンなどの高配当株は個人が売り越しとなる局面でも当社の預かり資産残高は減っていない」

(聞き手は野村優子)

 社長を経て2012年から現職。1967年に野村証券に入社してから、相場を長年見てきた。日経平均が最高値を付けた89年当時、野村の株式担当役員だった。74歳。

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