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超攻撃型、中国の牙城崩す 卓球・平野美宇(上)

1~3位を独占する中国を4~6位で追走する日本。最新の卓球女子世界ランキングが突きつける現実は「卓球王国」の厚く高い壁を物語る。2020年東京五輪で初の金メダルを目指す日本にとって、平野美宇(エリートアカデミー)のこの1年余の躍進は、そんな状況にくさびを打ち込んだといえるだろう。

ランキングは自己最高の5位。日本勢トップこそ石川佳純(全農)に譲るが、あどけなさも残る17歳が残したインパクトは群を抜く。五輪、世界選手権と並ぶ卓球界の三大タイトルのワールドカップ(米国)を昨年10月、日本選手として初制覇。今年1月の全日本選手権では3連覇中の石川を決勝で圧倒し、史上最年少優勝を果たした。

「ハリケーン」と名付けられた平野の超攻撃型卓球は世界に衝撃を与えた

アジア選手権、日本勢21年ぶりV

ハイライトは日本勢21年ぶりの優勝となった4月のアジア選手権だ。準々決勝で16年リオデジャネイロ五輪金メダルの丁寧にフルゲームで勝利。準決勝と決勝も当時2位と5位の中国勢を破り優勝をもぎ取った。

名だたる相手に臆せず、台の近くから高速ラリーで真っ向勝負。左右に回転のかかったボールを打ち分け、揺さぶった。国際卓球連盟が「ハリケーン」と名付けた超攻撃型卓球は世界に衝撃を与え、日本チームには「中国選手への苦手意識を払拭してくれた」(石川)と勇気をもたらした。

6月の世界選手権(ドイツ)でも、中国勢の表彰台独占を切り崩す銅メダル。国際連盟による今年の最優秀選手候補の4人に入り、飛躍の1年を終えようとしている。

これまでは「誰にも負けない」というバックと、フォアからの正確なドライブが持ち味。安定感がある半面、相手のミス待ちの受け身になりがちで格上には競り負けた。世界ランキングを上げられず、15年秋のリオ五輪代表選考で落選。東京五輪を見据え、思い切ってプレースタイルを変えたことで新境地を開いた。

所属する寄宿制のエリートアカデミー女子監督、中沢鋭のもとで速くて強いボールが打てるように下半身を強化。ウエートトレーニングも始め、左右にふられても軸がぶれず、素早く立て直せるようになってきた。

「ためなくても、打点は速い(高い)まま強く打つ。いきなり『どん』って感じ」。ラリーが続くと「手打ち」になりがちだった癖も改善。相手に触らせないノータッチは格段に増えた。

ニューヒロインの活躍を「王国」が黙認するはずがない。中国は平野にスタイルを似せた「コピー選手」で対策を進め、試合で得点を奪えば拳を握る。「前は余裕がある感じだったけど、最近は本気でぶつかってくる」。台の向こうから伝わる気配は明らかに変わった。

追う側から、いつの間にか追われる側へ。世界中からマークされ、国際大会では苦戦も増えたが気持ちはぶれない。「東京五輪で絶対に金メダルを取りたい。『あの人が取って普通』と思われるような選手になりたい」。世界を驚かせただけで満足する気はさらさらない。(敬称略)

〔日本経済新聞夕刊11月20日掲載〕

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