2017年11月19日(日)

琵琶湖疏水はロマン 近代京都の礎を観る会代表幹事・高桑暉英さん(語る ひと・まち・産業)
明治の意気脈々 京に誘う

コラム(地域)
関西
2017/11/15 12:00
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 ■京都に琵琶湖の水を取り込む琵琶湖疏水(そすい)は明治時代の京都を産業都市として再生した。京都の和菓子メーカー会長で「近代京都の礎を観(み)る会」代表幹事の高桑暉英さん(78)は大津から京都・蹴上(けあげ)までを「明治ロマンの道」と名付けた。

 たかくわ・てるひで 1939年中国東北部の四平街(現吉林省四平市)生まれ。父は金沢、母は松山出身。46年家族7人全員で京都・舞鶴に引き揚げ、松山市へ。10歳で京都市に移り住む。64年立命館大法卒。67年食品製造の都食品を設立、2006年から会長。

 たかくわ・てるひで 1939年中国東北部の四平街(現吉林省四平市)生まれ。父は金沢、母は松山出身。46年家族7人全員で京都・舞鶴に引き揚げ、松山市へ。10歳で京都市に移り住む。64年立命館大法卒。67年食品製造の都食品を設立、2006年から会長。

 「明治時代によくつくったもんだ。最初にできた第1疏水は約10キロの間にトンネルが4カ所もある。船を行き来させるための閘門(こうもん)やインクラインといった施設も必要だった。工事の責任者になった田辺朔郎は着工当時まだ20代だった。国際社会にデビューしたばかりの明治日本の熱い思いに触れると、こちらも勇気が湧いてくる。この歴史遺産を多くの人に知ってもらうのが願いだ」

 「疏水は明治維新後に寂れた京都を近代都市として再生する『京都策』の主要プロジェクトだった。水は水力発電のほか、舟運や飲用水に利用された。京都に個性的な企業を生み出し、発展させる源流になった。京都は江戸期以前の歴史遺産だけで成り立っているのではない。疏水建設が挫折していれば、今の京都はありえなかった」

 ■2003年に大学時代の友人らと同会を立ち上げた。毎年11月に参加者を募って、ウオーキングイベントを開く。今年は23日を予定する。09年には京都市ニューツーリズム創出事業の認定を受け、補助金で疏水の歴史散策マップを発行した。

 「ヨットが趣味で琵琶湖に通っていた。20年ほど前、ハーバーの近くにある石積みの施設を目にして、何だろうと思った。調べてみると国の史跡が12カ所もあった。水路のトンネルの出入り口には明治の元勲たちの扁額(へんがく)がかけられているが、草木が生い茂り、見えない状態だった。第2疏水はすべてトンネルを流れるため、市民にも存在が知られていない」

 「知ってもらうには実際に来てもらうことだ。疏水沿いは紅葉が美しい。約10キロを歩くイベントは自分たちの楽しみでもある。トンネルなど歴史遺産が残る場所には会員がいて説明する。自分の歩くペースで自由に歴史散策を楽しんでもらえる。これまでに3千人以上が参加した」

 ■高桑さんらの活動は京都市を動かし、疏水沿いには説明看板が立つ。今後は大津閘門や御所水道ポンプ室の史跡指定を働きかける。維新から150年となる来年を控えて、京都の近代化事業への関心は高まっている。

23日予定のウオーキングイベントでは歴史遺産の前で説明が聞ける(京都市)

23日予定のウオーキングイベントでは歴史遺産の前で説明が聞ける(京都市)

 「田辺の回顧録によると、日露戦争で対戦したロシアの軍人クロパトキンが開戦前に日本を訪れ、その参謀が疏水を視察している。日本を侮ってはいけないと感じたというが、ロシア上層部には伝わらなかった。当時その視察を示す英語の看板もつくられ、今も残っている。歴史の大きな流れを感じることができる」

 「地域の歴史を学び、先人の苦労のうえに今の京都があることを知ると、より地域への愛着がわくのではないだろうか。琵琶湖への感謝の念も忘れたくない。会員も高齢化して活動は楽ではないが、もともと遊びで始めたことだ。楽しみながら続けていきたい」

観光船 来春就航めざす

《一言メモ》琵琶湖疏水は1890年に第1疏水が完成、発電や舟運などに使われた。当時の日本最長の2436メートルのトンネル工事は困難を極め、ルート上に垂直に2本の竪(たて)坑を掘って開削した。

 増大する電力需要に対応するために、すべてトンネルの第2疏水が1912年につくられた。水道水としての給水も始まった。1日200万トンの水が送られ、今も水道水として使われている。

 疏水の通船は51年に廃止されたが、観光船として復活させる計画が進んでいる。大津から京都・蹴上までの8キロの区間で2018年春からの本格就航を目指す。2隻の観光船を新造するために「ふるさと納税」を活用して寄付金を集めている。5万円以上の寄付で乗船できる特典を付けている。

(大阪地方部 木下修臣)

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