2018年9月26日(水)

北越紀州と大王 泥沼の対立 空費5年

2017/11/14 6:30
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 製紙第5位の北越紀州製紙は14日、同社が筆頭株主である4位の大王製紙と5年前に結んだ技術提携の契約が切れる。最大手の王子ホールディングスなどに対抗する第三極作りを目指したが、すでに過去の話。実りは小さいばかりか、大王による株式希薄化を巡り法廷で争っている。デジタル経済の波を受けて内需が縮小するなか、これ以上空費する時間はない。

北越紀州製紙の岸本社長

北越紀州製紙の岸本社長

 北越紀州製紙が13日発表した2018年3月期見通しの連結売上高は4.8%増の2750億円、営業利益は7.0%減の120億円となった。近藤保之取締役は東京都内で決算会見を開き、減益の理由を「製紙設備や輸送の燃料になる重油など原燃料が値上がりした」と話した。

大王製紙の佐光社長

大王製紙の佐光社長

 北越紀州の経営で決算以上に重要なことは、大王と12年11月にスタートさせた技術提携が14日付で期限を迎える点だ。5年間の総決算になるはずの節目にある。

 北越紀州の岸本晢夫社長が主導した提携では当初、北越紀州の新潟工場(新潟市)、大王の三島工場(愛媛県四国中央市)という屈指の生産性を持つ拠点に互いの技術者を送り、幅広い製品の製造方法を開示したり、チラシや本に使う印刷用紙を相互供給したりする計画があがっていた。

 相乗効果について両社の言葉は少ない。近藤氏は「技術交流は実質2年間しかなかった」と話しつつ、「5年間続けていたら効果があったはず。我々としてはやるべきだったと思う」と語った。まず当初3年間で両社を合わせコスト削減など50億円程度の相乗効果を出すといっていた金額には言及していない。「お互いもう少し協調的であれば」とこぼすのみだ。

 大王の阿達敏洋専務は10日の決算会見で「3年間は効果があったはず」と認識の食い違いを見せたが、いずれにせよ同社も提携を詳しく振り返るつもりはないようで具体的な数字は示さない。

 両社は原料となるパルプの生産性を高める知恵を出し合ったようだ。古紙の配合率を高める大王の技術を北越が手に入れ、発色やつや出しをよくする北越の塗工技術は大王のプラスになったとみられる。だが、5年という期間を評価できる材料はあまりに乏しい。

 大王の佐光正義社長は17年4月、提携の明確な成果が見いだせないまま11月の満了を待たず提携を打ち切ると発表していた。北越紀州は大王が一方的に通告、公表したと反発した。だが、たとえ延長したくてもできる状態にない。

 北越紀州が12年、2割を出資する筆頭株主になるときから互いの関係はこじれていた。北越紀州は大王創業家の株式を買い取ったのだが、佐光社長をはじめとする大王経営陣は歓迎していなかった。大王経営陣は北越紀州にのまれまいと、逆に相手にTOBを仕掛けるパックマン・ディフェンスの事例を調べるようなことをやっていた。

 北越紀州が第三極作りを目指した背景には、06年に王子による敵対的TOB(株式公開買い付け)をしかけられた経緯があった。TOBは失敗したが、トラウマを抱えた当時の北越製紙は紀州製紙と合併し、次に大王に出資した。三菱製紙とも、同社販売子会社との統合を探った。これらの経緯のなかで大王との争いが続いた。

 北越紀州は15年、三菱製紙と探っていた販売統合が破談となり「背後に大王の介入があった」と主張した。大王が新株予約権付き社債を同年に発行したときは「株価が急落した」として、佐光社長ら経営陣を相手取る損害賠償請求を起こした。これは今も係争中だ。

 対立が泥沼化し、第三極は形をなさないまま時間が過ぎた。今後それぞれの生き残り策に特化しなければならない。岸本社長は17年5月、19年度までの中期経営計画を発表して売上高3000億円、営業利益150億円と目標を掲げている。

白板紙の値上げが進んだ中国での事業は安定収益の基盤(中国広東省の工場)

白板紙の値上げが進んだ中国での事業は安定収益の基盤(中国広東省の工場)

 紙の内需は16年に約1500万トンで、5年で1割減った。北越紀州は他社がうらやむ新潟工場をフル稼働させてもこのままでは縮小均衡だ。

 紙の製品は安いため、輸送費がかさむ輸出では利益を稼ぎにくく、世界的にローカル産業の側面が強い。海外部門を成長の源にするなら原料調達、生産、販売面で国々に根付く必要がある。

 17年3月期の連結売上高のうち海外部門は28%まで高まった。約200億円かけた中国広東省の白板紙工場が15年に稼働。菓子箱などの需要が高まり、原料高を反映させた製品値上げが進んでいる。中国のこの事業は海外でのモデルになる。

 15年に約60億円で買収したカナダ・アルバータ州のパルプ製造会社は、重要な北米市場の足がかり。17年1月に底だったパルプの国際価格が上昇したため、通期では増益要因になる。

 業界再編の流れは後退したまま、王子が力をつけていく。三菱商事出身の岸本社長が世界を見渡して打つ手一つ一つが、今まで以上に重みを持ってくる。

(小柳優太)

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