2017年11月19日(日)

トランプ氏「米国第一」が世界を貧しく

北米
The Economist
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2017/11/15 2:30
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 ほぼ1年前の11月8日、ドナルド・トランプ氏が米国大統領に選出された。多くの人は米国の外交政策が破滅的に変わると予想した。何しろトランプ氏は貿易協定を破棄し、同盟国を見捨て、ルールに基づく国際秩序の下に爆弾的なものを仕込み、文字通りの爆弾も手当たり次第に落とすと示唆していた。

 北大西洋条約機構(NATO)は「時代遅れ」だと語った。北米自由貿易協定(NAFTA)は「おそらく史上最悪の貿易協定」だった。また、米国は外国人にあまりに親切すぎたという。「昔は戦争に勝った時には、戦争に勝った。その国を自分のものにした」。トランプ氏はこんな意見をぶち上げ、さらに過激派組織「イスラム国」(IS)を「爆撃でびびらせ、石油を取り上げる」と述べていた。

強権的な指導者を好む姿勢を隠そうともしていない(13日、フィリピンのマニラでドゥテルテ大統領(右)と話すトランプ大統領)=AP

強権的な指導者を好む姿勢を隠そうともしていない(13日、フィリピンのマニラでドゥテルテ大統領(右)と話すトランプ大統領)=AP

 トランプ氏の外交政策は今のところ約束したほどひどくはない。米国は地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」から離脱して気候変動の抑制を難しくし、大規模な貿易協定である環太平洋経済連携協定(TPP)を放棄した。ただ、トランプ氏は大急ぎで孤立主義に逃げ込んだわけではない。NATOからは脱退していない。米国と同盟関係にある一部の東欧諸国はオバマ前大統領の冷たい無関心よりはトランプ氏の強気な発言の方がましだと考えている。

■安心感醸す側近の軍人たち

 トランプ氏は戦争を一つも始めていない。窮地に立つアフガニスタン政府に対する米国の防衛を強化し、イラクがISから都市を奪還するのを支援した。アフリカなど同氏がほとんど注意を払っていない世界の地域では、前政権の政策が人手不足に陥りながら自動操縦で続いている。トランプ氏が12日間の日程でアジアを歴訪するなか、同氏のことを世界から完全に身を引いた人物として片づけるのは難しい。

 多くの人は、トランプ氏を取り巻く冷静で有能な軍人たちに安心感を見いだしている。トランプ氏の首席補佐官、国防長官、国家安全保障担当の大統領補佐官はみんな(軍出身のため)戦争のおぞましさを理解しており、大統領の軽はずみな行動を止めるだろうというのが彼らの見方だ。

 楽観的な人はトランプ氏がレーガン元大統領を見習う可能性さえあると推測している。米国の軍事力を取り戻し、海外で絶大な強さを誇示することにより、手を広げすぎ、おびえた北朝鮮が旧ソ連のように崩壊するというわけだ。一方、たとえトランプ氏が世界における米国の地位に短期的なダメージを与えたとしても2020年の大統領選挙で退陣に追い込まれ、万事が平常に戻ると自信満々に予想する人もいる。

 こうした見方はすべて希望的観測だ。トランプ氏は安全保障についてはいくつかのひどい過ちを避けた。以前に実行すると脅したように、台湾の曖昧な地位をめぐって中国と不要な論争を始めることはなかった。実現すればロシアの近隣諸国がクレムリン(ロシア大統領府)の意のままになったかもしれないプーチン大統領との大々的な取引は、米議会と選挙でのハッキング疑惑に阻まれ追求できなかった。また、トランプ氏はどうやら中国を説得し、核兵器増強をやめるよう北朝鮮にもう少し圧力をかけさせたようだ。

■冗談では済まされないツイート

 しかし、トランプ氏はイランの核爆弾製造能力を抑制する国際合意を弱体化させるなど、重大なミスもいくつか犯している。また、同氏の本能はたちが悪く、歴史から学ぶことは何もないと思い込んでいる。プーチン氏や中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席といった強権的指導者に共感を寄せる。軍人を愛する一方で外交官を軽蔑している。バス数台分を埋める多くの経験豊富な大使を解任し、米国務省を骨抜きにした。

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