できたてビールにプラスの味わい ブルーパブ最前線

店内で醸造したクラフトビールをその場で飲める店が「ブルーパブ」だ。一番おいしい状態のビールが飲めるだけでなく、その店のオリジナルのビールも楽しめる、ビール好きにとっては天国のような店だ。「できたてビールをその場で お勧めブルーパブ(上)」で紹介した3軒に加え、後編では4軒を紹介する。
今のトレンドがわかる都会派ブルーパブ
Y.Y.G. Breweryは、東京・新宿駅の甲州街道から少し奥に入った細い道沿いに立つビルの1階にある。1階がブルワリー(醸造所)兼ビアパブ。同じビルの7階には、ビアレストランがある。
Y.Y.G.の名前は、住所が「渋谷区代々木(YoYoGi)」であることに由来しているとか。ビールの名前も、「新宿ペールエール」、「代々木アンバーエール」、「歌舞伎町インペリアルスタウト」など、地名由来のものがあり、まさに新宿で醸造したビールを、その場で飲んでいることが実感できる。

ブルワーは山之内さんと伊ヶ谷さんのお2人。スタンダードなスタイルのビールを安定して造るという、最初に目指していた段階をクリアし、現在は、新しいスタイルのビールも手がけ始めているとのこと。特に、2017年は、サワーエールという爽やかな酸味のあるビールや、米国でホットなトレンドになっている「New England Style IPA」と呼ばれる新しいスタイルの「ニュートーキョウIPA」を作り、大人気となっている。「ニュートーキョウIPA」はジューシーなホップの香りとマイルドな苦味で、従来のIPAよりもするすると飲める。Y.Y.G.のビール・メニューは、ビールの説明がとても分かりやすく書いてあり、ビール初心者にも優しい。

1階は、ブルーパブとして1人からグループまで気軽に利用でき、7階のレストランでは1階で作ったビールと共にアメリカンフレンチの料理が楽しめる「Y.Y.G. Brewery & Beer Kitchen」は、今のビールのトレンドを知りたい人にぜひ行ってほしいお店。
●住所:東京都渋谷区代々木 2-18-3 オーチュー第1ビル 1階&7階
●TEL:03-6276-5550
●営業時間:
月曜~金曜 17:00~23:30(L.O. 23:00)
土曜・祝日 12:00~23:30(L.O. 23:00)
日曜 12:00~21:00(L.O. 20:30)
●休日:不定休
●席数:9席+スタンディング15人+オープンテラス14人
●TAP:10(最大11)
●URL:http://www.yygbrewery.com/
※TAPの項目はビールサーバーの注ぎ口の数
※店舗データは1階のビアパブ部分のもの
オープンしたて、駅3分で便利
「後藤醸造」は2017年8月に醸造を開始したばかりのブルーパブ。小田急線経堂駅から徒歩3~4分と、駅からも近い。基本的に立ち飲みスタイルで、立っている目線から醸造タンクがガラス越しに眺められるようになっている。

醸造長兼オーナーの後藤さんは、東京農業大学で学んだあと、山梨県甲府市で会社に勤めていた。ある日、市内にあるブルワリー、アウトサイダーでクラフトビールに出合い、ビールの世界に魅了されてしまった。ブルワリーに転職し、1年半勤めたあと独立し、2016年7月にビアパブを開店。1年後の2017年7月に酒造免許を取得した。2017年11月現在、初めてのオリジナルビールである「経堂エール」を提供中。訪問した際には、2回目に仕込んだビールを飲むことができた。とても綺麗なアメリカンペールエールで、かんきつ系の香りと苦味がちょうど良いバランスに仕上がっていて、おかわりしたくなるビールだった。


「まだ、始まったばかりなので、まずは仕込みの行程とビールの味をしっかりと確立したいです。うちは食事にも力を入れていますが、両隣のお店のたこ焼きやたい焼き、お寿司も持ち込みOKです。ご近所のお店のおいしい食べ物と一緒に、うちのビールを飲んでいただくのがとてもうれしいんです」(後藤さん)
後藤醸造は、立ち飲みスタイルで気軽に入ることができて、オリジナルレシピのおいしいビールを飲め、ご近所の人に愛されている素晴らしいお店。
●住所:東京都世田谷区経堂 2-14-3 1階
●TEL:03-6751-0698
●営業時間:
水曜~土曜 15:00~22:30
日曜 13:00~21:30
※祝日は曜日に準じる
●休日:月曜・火曜
●席数:スタンディング12名
●TAP:4
●URL:http://www.gotojozo.com
老舗酒屋で英国人が造るビール
JR横浜線の十日市場駅から徒歩7~8分ほどのところに「TDM 1874 Brewery」はある。母体は、1874年(明治7年)創業の老舗酒屋の坂口屋である。TDMの由来は、「十日市場(Ten Days Market)」から。大きな通りに面したお店は、豊富なラインナップの日本酒やワインも購入可能であり、酒屋の客用に駐車場が用意されている。その駐車場から、醸造所のきれいなタンクが見える。

醸造長は、英国人のジョージさん。英国でビール醸造に携わっており、来日後も2社の醸造所に勤めたという。

ジョージさんは、日本の気候や季節に合わせて、最適なスタイルのビールを飲んでもらうことを心がけているという。訪問した10月の半ばには、「秋びより」というビールや、ハロウィーンにちなんで、地元で採れたカボチャを使った「パンプキンエール」がラインナップされていた。「秋びより」は、モルトの風味が香ばしいアンバーエールで、6.5%というやや高めのアルコール度数と相まって、秋にふさわしい飲み応えのあるビールだった。

食事は、ギョーザや唐揚げ、ピザ、ソーセージなどビールに合いそうなものがラインアップされている。店内はカウンター席があり、明るい照明で、テーブル席もゆったりしているので、一人でも家族連れでも、とても入りやすい。
「TDM 1874 Brewery」は明治時代から続く老舗の酒屋が手がけ、英国人の醸造長が、伝統を大事にしつつ、現代的なアレンジで新しいビールを季節ごとに提供してくれるという素晴らしいお店である。
●住所:神奈川県横浜市緑区十日市場町835-1
●TEL:045-985-4955
●営業時間:
月曜~金曜 17:00~22:00
土曜 12:00~22:00
日曜・祝日 12:00~21:00
●休日:水曜
●席数:20席
●TAP:5
●URL:http://www.sakaguchiya.co.jp/shop/
地産地消で造るビールと料理
埼玉県小川町は、有機農業で全国的に有名な町である。小川町に移り住み、農業をしながらビール造りを目指したのが、「麦雑穀工房マイクロブルワリー」を2003年に創立した馬場勇さん。現在は、馬場さんの娘さん夫婦がビール事業を専門に行ない、馬場さんは有機農業に取り組んでいる。

「麦雑穀工房マイクロブルワリー」のお店に入ると、12席のL字カウンターがある。カウンターも含めて、店内は全て手作り。例えば、天井の照明は、馬場さんの庭にあった孟宗竹を乾燥させ、2つに割ったもの。醸造所は、客席からドア一つ隔てたところにある。


「僕たちの看板ビールである『雑穀ヴァイツェン』は、自分たちで栽培した小麦、ライ麦、キビやアワを加えています。穀物の味わいを感じていただければと思います。ヴァイツェンをはじめとして、3種類がレギュラーで、他にシーズナルも1~3種類お出ししています。今は、ビール用の大麦やホップも育てていて、年に2回、100%自分たちが育てた素材を使用したビールも造っています。自給率は、これからもどんどん上げていきたいですね」とは、醸造長の鈴木さんの言葉。麦雑穀工房では、おつまみのピクルスやサラダなどに使う野菜は、馬場さんが育てたものを使っていて、料理の材料も自給率が高い。
「雑穀ヴァイツェン」は、ヴァイツェンらしい真っ白でこんもりした泡、スッキリとしたエステル香、飲んだときに感じる心地いい酸とキレのいい飲み味がとてもおいしい。ピクルスにとても合うヴァイツェンだ。
お店はカウンター席のみで、一人でもふらりと入ることができ、醸造を担当している鈴木さんが丁寧にビールの説明をしてくれるので、ビール初心者にもビール好きにもとても親しみやすいお店。
埼玉県小川町で、自分たちで育てた原材料を使って造るクラフトビールと料理が提供され、遠出して訪問する価値があるのが麦雑穀工房マイクロブルワリー。未体験の方は、ぜひ行ってみてほしい。
●住所:埼玉県小川町大塚 1151-1
●TEL:0493-72-5673
●営業時間:
水曜・木曜・金曜 15:00 - 19:30
土曜 11:00 - 19:30
日曜・祝日 11:00 - 18:30
●休日:月曜・火曜
●席数:12席
●TAP:3~6
●URL:http://www.facebook.com/zakkokubeer/
2011年5月にクラフトビールのおいしさに目覚める。それを多くの人に伝えたいとWebサイト「クラフトビール東京」を開設。東京近郊のクラフトビールの店を紹介し続けている。
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