「覚書」「協議書」が大半 米中巨額契約 知財など構造問題手つかず - 日本経済新聞
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「覚書」「協議書」が大半 米中巨額契約 知財など構造問題手つかず

【北京=河浪武史】米中両政府が主導して両国企業がまとめた2535億ドル規模の巨額契約は、9月から急ピッチで準備が進んだ。中国側がエネルギーや航空機を購入して貿易不均衡の是正につなげる狙いだが、取引開始が確約できない「覚書」や「協議書」が大半。知的財産権の侵害など構造問題は手つかずで、トランプ政権の通商政策は戦略が定まらない。

トランプ大統領は9月、側近のロス商務長官に、初の訪中に合わせて米企業の使節団を結成するよう命じた。同月下旬にはロス氏が自ら訪中して中国の李克強(リー・クォーチャン)首相らに会い、巨額商談の下地を急ピッチでつくった。

ただ、契約までの時間はわずか2カ月間。見た目の契約総額は年間の貿易赤字(3500億ドル弱、米商務省調査)に近い額を積み上げたが、ボーイング機や米国産大豆の購入など、中身の大半は「協議書」や「覚書」どまり。米中の貿易不均衡の是正には力不足だ。

トランプ政権が民間頼みで実績づくりに走ったのは、1年前の大統領選で公約した貿易赤字削減に妙手がないためだ。トランプ氏が選挙戦中に唱えた「中国製品に45%の関税を課す」「中国を為替操作国に指定する」といった過激策は、現実的とはいえず霧消した。米経済は好調で、消費や投資が増えて貿易赤字はむしろ拡大基調にある。

米企業がトランプ政権に対中戦略で求めているのは、知的財産権の侵害対策など貿易・投資のルールづくりだ。IT(情報技術)企業を中心に中国進出時には技術移転を求められるケースがあり、米通商代表部(USTR)は経済制裁も視野に「通商301条」に基づく調査に入った。日本政府も中国に貿易ルールの整備を求めているが、こうした構造問題はトランプ政権での3回目の米中首脳会談でも持ち越しとなった。

「米国に企業と雇用を取り戻す」と声高に訴えてきたトランプ氏にとって、貿易赤字の削減は政権公約の中核だ。メキシコやカナダとの北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉は年内合意を断念し、韓国とのFTAも具体的な見直し策がみえてこない。大統領選から1年がたつが、肝煎りの通商政策は迷走が続く。

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