京セラ「アメーバ経営」開発にも スマホから医療へ
解剖 先端研究所

2017/11/8 2:00
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京セラが関西文化学術研究都市(けいはんな学研都市)に持つ中央研究所(京都府精華町)は全国6カ所にある研究所の中核施設だ。スマートフォン(スマホ)用部品の高機能化に加え、嗅覚センサーや脱毛治療など新分野にも乗り出す。経営と同じく「アメーバ」と呼ぶ小集団で開発陣が予算や進捗管理を徹底し、分野横断で新事業領域を開拓するのが強みだ。

■採算管理を徹底

横の連携が新たな技術を生むカギとなる

横の連携が新たな技術を生むカギとなる

各地に分散していた開発機能を統合して1995年7月に設立した。主力製品である水晶振動子と通信部品のSAWフィルターの小型化を実現し、世界のスマホメーカーに供給してきた実績がある。分室を除く本体の開発者数は約100人。

研究者は5~6人で黙々と新しい電子部品や素材の試験に没頭していた。「スマホに求められる部品特性は日々高まっている」(高周波デバイス開発部責任者の作島史朗氏)。次世代の部品の研究に余念がない。

開発はグループごとに細分化している印象だ。白板には工程管理の文字が細かく書き込まれ、グループリーダーは進捗状況が書き込まれたファイルを持ち歩いていた。

ファイルには月ごとに開発にかけた費用、人員、進捗状況、成果……。項目は20~30に及ぶ。室内で使った光熱費まで管理し、きちんと表にして書き込む徹底ぶりだ。

小集団で月ごとに採算管理を徹底する京セラの「アメーバ経営」は生産や営業だけでなく、開発にも浸透しているのが特徴だ。「基礎開発でも、事業化までどれだけ費用と時間がかかるかという感覚が大切だ」と作島氏は話す。

研究はテーマごとの小集団に分かれているが、アメーバはともすれば縦割りを招く。そのため、「新しい開発などでは必ず他のテーマの人も入ってもらい、議論する。アメーバを有機的に結合する」(神山一司所長)のだという。

中央研究所の開発品目は電子部品や太陽電池、ソフトや生産性向上・プロセス管理など多岐にわたる。中でも最近脚光を浴びているのが微細な電子部品とメディカル関連の新事業だ。

■ナノ単位で選別

スマホでは「水晶振動子」と呼ばれ、電子部品が信号を発する際の「ものさし」となる基幹部品で世界最小の製品開発・事業化に成功した。鍵となったのはプラズマ加工技術。もともとは他の部門のシリコン薄型加工技術を「一緒にやってみないか」と応用してみたのがきっかけだった。

電子部品の技術はメディカル関連の技術にも横展開している。スマホの電波の送受信に使う電子部品の技術を基に開発した「超音波センサー」。特定の周波数を振動させる技術を応用し、数十ナノ(ナノは10億分の1)の物質を選別して動かすことが可能になる。これは製薬や医療向けの開発に今後役立てるという。

反応膜にガス分子が吸着するのを電気的に検知し、食品の香りや鮮度を判別する「嗅覚センサー」や、理化学研究所と共同で、正常な頭皮から取った細胞を大量生産し、再度頭に移植する新手法も開発中だ。

米アップルのiPhoneや車のIT(情報技術)化により、過去最高水準の受注に沸く電子部品市場。だが「中国や台湾メーカーもどんどん技術が上がってきている」(神山氏)。開発スピードの向上と多角化に向けたアメーバ集団の議論は続く。(渡辺直樹)

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