2017年11月18日(土)

「習近平思想」支える男、舞台に 常務委員・王滬寧氏

中国・台湾
The Economist
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2017/11/8 2:30
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 中国共産党の最高指導部である中央政治局常務委員会のメンバーに選ばれたい、と燃えるような野心を抱くのと同じくらい健全とはいえない知的追求が一つだけある。それは、何を考えているのか分からない表情と不自然なまでに髪が黒い人たちの集まりであるその常務委員会の委員に誰が選ばれるのかについて、不健全なまでに関心を持つことだ。だが、それでもこのコラムをぜひ、読んでほしい。10月25日に新たに発表された7人の常務委員会のメンバーに注目に値する人物がいるからだ。62歳の王滬寧(ワン・フーニン)氏だ。

 王氏は、恐らく中国共産党のイデオロギーとプロパガンダの責任者を務めることになる。彼も、その部下となる党中央宣伝部長の黄坤明氏も、中国の最高指導者である習近平(シー・ジンピン)総書記(国家主席)に忠実だとされる。当然とも思えるこの事実をあえて指摘しておきたいのは、王氏を通して、習氏は共産党の重要かつ巨大な組織に対し、大きな影響力を振るうことになるからだ。最高指導者といえども、彼の前任者たちがこれだけの影響力を保持していたわけではない。

■共産党の統治正当化のロジックを模索

 興味深いのは、王氏が中国共産党宣伝部の産物ではない点だ。過去の担当者のように、眠っていても党の方針をすらすらと復唱するタイプではない。自分自身の主義主張をしっかりと持っている人物だ。実際、彼の考えは党の公式見解の変革に大きく貢献し、幅広く定義されたそのイデオロギーは、党の今後の方針の中心に据えられてきた。

王滬寧氏は、江沢民氏から習近平氏まで3代トップの思想を起草、中国共産党政権の理論的支柱を提供してきたキーパーソンだ=AP

王滬寧氏は、江沢民氏から習近平氏まで3代トップの思想を起草、中国共産党政権の理論的支柱を提供してきたキーパーソンだ=AP

 若くして上海の復旦大学の法学部教授になった王氏は、1980年代から90年代にかけて、鄧小平の改革・開放政策が政治面にもたらした様々な影響を把握しようとしていた。鄧の改革により農民たちは集団農場を去り、自分で作物を作ったり、事業を自ら興したり、都市部に働きに出たりするようになり、国民の生活水準は劇的に向上しつつあった。一方で、一連の改革により「地方の隅々までを支配していた中央政府は、その実質的な支配力を失うことにつながった」と王氏は指摘していた、と米調査会社コンファレンス・ボードのジュード・ブランシェット氏は自分のブログで説明している。そのため、王氏は共産党政権による統治を正当化するための新たなロジックを模索し始めた。

 王氏が毛沢東以降の指導層の中で異例なのは、彼が学者として考えてきたことが驚くほどしっかり記録に残っていることだ。少なくとも、90年代半ばにもっと重要なことに従事すべく学界から引き抜かれるまで、数々の著作物を残している。毛沢東が進めた文化革命については「前代未聞の政治的大失敗」と書いている(王氏自身は当時まだ若く、病気がちだったため被害を免れた)。

 80年代には中国のリベラル派でさえ、中国がすでに社会、経済で大きな変化を遂げていただけに、中央政府がもっと事態を把握して、介入すべきだとの考え方を支持していた。そうした中で、王氏は政治面における自由や民主主義は中国がもっと発展してからが望ましいとして、自ら「新権威主義」と呼ぶ理論を正当化するための根拠を提示した。

 こうした考え方は89年の天安門事件発生による混乱後、一層正当性を持つようになっていった。そして王氏の思想は、当時の共産党指導部が再び中央集権化を進め、強い態度で権力を行使すべきだという考え方を進める上での理論的支柱となった。

■3代の最高指導者に仕える

 90年代初めには、王氏は汚職が政治的にどんな影響をもたらすかについて、ほかの多くの学者より深く掘り下げて考えていた。そして上層部での腐敗は、政府への信頼を傷つけるだけに、組織の下の方で起きる腐敗よりもはるかに深刻な問題だと指摘した。腐敗を許せば、ソ連と同様に中国の共産党政権も崩壊に至ると警告した。これは、習氏がかつてないほどの熱意で腐敗撲滅を進める根拠を提供することとなった。

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