2019年9月16日(月)

六甲で鍛えヒマラヤへ 登山家 重広恒夫さん(もっと関西)
私のかんさい

2017/11/7 17:00
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■重広恒夫さん(70)はチョモランマ(エベレストの中国名)北壁を1980年に登り、世界最高の峰に日本人として初めて新ルートを刻んだ。2016年10月にもヒマラヤへ挑み、日本山岳会関西支部隊を率いる隊長としてネパールのナンガマリ2峰(6209メートル)初登頂に成功した。

 しげひろ・つねお 1947年山口県生まれ。71年に岡山理科大卒、アシックス入社。73年のエベレスト南西壁挑戦を皮切りにヒマラヤへ13回遠征し、ほとんどで登頂に成功。同社アウトドアマイスターを務め、6月から日本山岳会副会長。

しげひろ・つねお 1947年山口県生まれ。71年に岡山理科大卒、アシックス入社。73年のエベレスト南西壁挑戦を皮切りにヒマラヤへ13回遠征し、ほとんどで登頂に成功。同社アウトドアマイスターを務め、6月から日本山岳会副会長。

関西支部80周年事業として計画した。隊員は関西支部を中心に公募したが、最終的には関西支部から独立した四国支部や京大生も参加した。メンバーはヒマラヤ登山が初めての素人集団をあえて集めた。登山客をツアーで募って高峰に連れて行くガイド登山が世界的な潮流となり、日本でもかつて100人以上いた先鋭的な登山家は今や10人ほどに減ってしまった。

私が目指すのは自分たちで汗をかいて荷を担ぎ、自らルートを切り開く登山。こうした冒険的登山家を再び育て、増やしたい。私にとっても95年に登頂を指揮したマカルー以来21年ぶりのヒマラヤ挑戦で、自らも山頂に立った。

関西支部では四国、近畿の分水嶺や県境を踏破するプロジェクトに挑戦している。最後に残った三重・奈良・和歌山県の県境の道なき道を踏破するプロジェクトに挑んでおり、来年3月ごろ終わる。関西周辺の県境は踏破が完了する。

■エベレストを70年に初登頂した冒険家の植村直己さんや松浦輝夫さん、平林克敏さんは関西出身や関西ゆかりの人たち。山に挑む関西人は耐久力があったという。

北壁世界初登はんをチョモランマ山頂で報告する重広さん

北壁世界初登はんをチョモランマ山頂で報告する重広さん

岩登りに北アルプスに行っても、交通の便が良い関東の人はすぐ来られるので天候が悪いと帰るが、関西の人はそう簡単に行けないから粘る。関西はしつこく慎重だ。これはヒマラヤ登山にとっては大事な要素。私もしつこい。何回も死にかけたが死にかける一瞬、脳裏をよぎるのは「あきらめたらあかん」だった。

ただ、最近は関東も関西もなくなった。(国内に広く出店する)流通のように日本全国共通だ。私は6月に日本山岳会の副会長に就任した。私から見ると今の若い登山者は体力がかつての3分の1に落ちているが、120周年を迎える2025年に向け、先鋭的な登山家を育てるプロジェクトを考えていきたい。

■山口県出身で大学卒業後はオニツカ(現アシックス)に。ほとんどを神戸市で勤めた。神戸は六甲山がそびえる。日本のロッククライミング発祥の地だ。

六甲山は身近にあって365日登れる。格好のトレーニングの場だ。私にとっては「六甲山からヒマラヤ」といえる。ただ、手軽に行けるだけに危険もある。日本全国で起きている山岳遭難のうち六甲山は上位を占めている。今も六甲山で安全登山教室を月4回ぐらい開いている。

通常のルートを歩くのではなく、道なき道を歩き、森に分け入るやぶこぎや沢登りなどだ。登山者の高齢化はますます進むから、関西で安全な登山を浸透させ、全国に広める。

■アシックスに支えられて登山を極めた。ヒマラヤへは偵察を含め13回遠征した。通算5年間ぐらいは会社を休んだ計算になるが、出勤扱いにしてくれた。

アシックスとは不思議な関係だ。入社後すぐ、エベレスト南西壁登山への参加の打診があった。当時所属していた神戸工場の高橋義行工場長(後に社長)がその話を聞きつけて「アカン言うたらどないすんねん」と私に問う。「辞めます」と言ったら即座に「行ってこい!」と返された。創業者の鬼塚喜八郎さんも理解があった。懐の深い会社だ。

日本の百名山を96年に123日間という短期間ですべて登ったことで注目され、アシックスのアウトドア製品の販売にも貢献できた。仕事は頑張り、誰もいない会社に休日出勤したこともある。最後はアウトドア製品を企画する部の部長だった。ヒマラヤにこれだけ登り、定年まで勤め上げた登山家は世界的にも珍しいと思っている。

(聞き手は大阪地方部 清水英徳)

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