2019年5月22日(水)

#03 孫正義氏が見せた涙 ソフトバンク膨張の原点

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2017/11/8 6:30
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孫が父から引き継いだのは、こうした損して得を取れ式の商売の手法だけではない。三憲は次々と手掛ける新しい仕事を、自らのアイデアで広げていった。姿を変え続けることをいとわない経営が、本業を変え続ける孫の経営戦略のモデルとなっている。

孫正義ソフトバンクグループ会長兼社長

孫正義ソフトバンクグループ会長兼社長

■「お前は俺と違って」

この当時、正義には目に焼き付いて忘れられない光景があると言う。三憲は酒が入ると少年正義に繰り返し言って聞かせた。

「俺はお前たちを食わせるために目先のゼニカネを稼ぐ仕事ばかりしとう。でも、そんなんは本当にやりたか事やなかけんね。いいか正義、お前は俺と違って、でっかい志ば立てて生きんといかんとよ」

「そう言ってオヤジが泣くんですよ」。記者の前で父の言葉を再現した時、感極まった孫の左目に涙が流れた。父親が成し得なかった事業家の道を、いつか俺が歩んでみせる。少年時代の決意がその後の孫の人生を決定づけた。

家族を養うために事業を変え続けた父に代わり、孫は情報革命というフィールドで天下を取るために事業を変え続けると言う。

「正義はまだ中学生くらいの青さから抜け切らんでおるとよ。まだ花は咲かせておらん。けど、その未来がほんまにあるっちゅう気にさせてくれるんです。まったく、楽しませてくれますよ」

孫正義がめざす異次元の未来。父もまたその日が来ることを心の底から信じていた。息子に志を説いたあの日と変わらず。

=敬称略

(杉本貴司)

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