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アイルランド籍投信、シェア拡大(海外投信事情)

アイルランド籍のファンドに投資マネーが向かっている。アイルランド中央銀行によると、アイルランド籍ファンドの純資産総額(残高)は2017年7月末時点で2兆2352億ユーロと、16年末と比べ7%増えた。過去1年間では15%の増加。アイルランドは税制面での魅力に加え、欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット)を決めた英国に代わる新たな欧州拠点としての期待も追い風になっている面があるようだ。

欧州投信資産運用協会(EFAMA)によると、EUの統一規格に対応した投資信託商品(UCITS)の資金流出入状況は、ブレグジットが決まった2016年6月下旬以降の1年間(16年7月~17年6月)でアイルランドが約1900億ユーロの資金流入超。英国の約372億ユーロの流入超を大きく上回った。

もともとアイルランドは、比較的リスクの高い株式に投資するファンドにも堅調に資金が向かっているのが特徴の一つ。全体で見ても英国より安定的に資金が流入している。ユーロ圏のUCITS市場におけるアイルランド籍ファンドの残高シェアは過去1年間で17.9%から18.5%に拡大した。英国が12.6%から12.4%にシェアを落としたのとは対照的だ。

ブレグジット決定を受けて、英国に拠点を置く世界の金融機関が移転先としてアイルランドに関心を寄せている。アイルランドは英語圏で、英国との時差もなくビジネス環境が近い。先進国最低水準の法人税率など他のユーロ諸国にはない強みがあるほか、投資家やファンドにとっても有利な税制が整っている。

アイルランド政府産業開発庁(IDA)によると、今年1~6月に15を超える国際的な金融機関が同国での拠点設立・拡張に合意した。米国のJPモルガンやバンク・オブ・アメリカ、シティ、英国のバークレイズやリーガル・アンド・ゼネラル(L&G)などだ。

その後も流れは変わらず、8月にはカナダのTDセキュリティーズが同国での事業拡張を発表した。アイルランドのレオ・バラッカー首相は「ブレグジットという難局に直面する中で新たな機会を追求し、世界の主要企業から投資計画を獲得する決意だ」と意気込みを語っている。

ブレグジットに向けた英国とEUの交渉は行き詰まり、2019年3月末の期限までに合意できない無秩序な離脱リスクを懸念する声が浮上している。英国がEU単一市場へのアクセスを失う「ハードブレグジット(強硬離脱)」に進む公算が大きく、資産運用業界にもその影響が及びかねない。

UCITSは投資家保護のための一定基準(EU統一規格)を満たせば複雑な手続きなしで他の国でも販売できる。しかし、英国がEUを離脱すれば「英国拠点の資産運用会社はアイルランドのようなEU加盟国に頼ってUCITSを再拠出するなど販売方法を変える必要が出てくる」(英法律・税務サービスのマセソン社)という。

アイルランドは英国と経済面での関係が深く、ブレグジットがプラスの側面ばかりに働くとは言えない。ただ世界の資産運用業界では企業誘致に前向きな同国への関心が今後も続きそうで、投資マネーを引き寄せる原動力にもなりそうだ。

(QUICK資産運用研究所ロンドン 荒木朋)

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