2019年2月21日(木)

大塚製薬の医療戦略 耐性結核薬を新興国に

2017/11/7 6:30
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三大感染症のひとつ、結核による死亡者数は世界で年間167万人にのぼる。薬に強くなった耐性結核が目立つ。大塚製薬は耐性結核を治す「デラマニド」をインドなど新興国で早く浸透させるため、提携と自社申請の両面で動く。

結核菌=結核予防会結核研究所提供

結核菌=結核予防会結核研究所提供

世界保健機関(WHO)によると、2016年に結核にかかった人は1040万人。インドが最も多く279万人いる。結核の死亡者数でみると、世界の死因トップ10に入り交通事故と並ぶ。

同社がデラマニドを14年に開発した当時、ほぼ40年ぶりの新薬として歓迎された。結核を引き起こす菌の細胞膜を構成しているミコール酸の合成を阻害、耐性菌に効果がある。1960年代に登場した薬「リファンピシン」などに対して強くなった結核の薬になる。

2014~15年に日本、韓国、欧州で発売した。ただ、世界でみると最大の焦点は先進国以外の国々にある。

同社は新興国での普及を目指して17年8月に米マイランと提携を発表し、インドと南アフリカでの販売権を与えた。大塚製薬の樋口達夫社長はマイランを「感染症のための高品質な薬を提供している」と評価した。マイランはインドでデラマニドの輸入許可を得た。

フィリピン・マニラ市の病院で診察を受ける結核患者。アジアなど世界で年100万人以上が亡くなる

フィリピン・マニラ市の病院で診察を受ける結核患者。アジアなど世界で年100万人以上が亡くなる

山崎慶三抗結核グローバルプロジェクトリーダーは提携について「患者の多い大国への足がかりになる」と話す。実はインド政府から供給要請があり、同国で自社販売する申請も出したが、マイランの商流にも乗せる方が浸透が早いとみた。

ロシアの製薬大手、アールファームとの提携も7月に発表、ロシアや独立国家共同体(CIS)諸国での販売権を供与していた。ロシアの患者数は減っているが、標準の治療法で治らない症例が増えているという。

大塚製薬が2つの提携で築いた販路がカバーする範囲は、世界の年間罹患者の33%になる。

新興国のうちインドネシア、中国では自ら販売承認を申請している最中で、フィリピンではこのほど販売承認を取得した。3カ国の年間罹患者は計24%にあたる。医薬事業の足場がある地域ではまず自ら普及させる。

耐性結核を患う年50万人のうちインド、ロシア、中国で半数に及ぶ。

アジアを中心とした新興国に比べ、純粋なビジネスとしての取引が難しいアフリカ諸国では官民の普及活動に乗る形で販売している。16年、世界抗結核薬基金を通じて提供を始めた。基金を通せば、薬の承認が下りる前でも薬を届けられる。

山崎氏はアフリカについて「需要が大きいが、紛争や財政危機で薬を届ける体制に限界がある」と話す。自社販売より各国政府、企業と協力する方が得策との結論だ。

同社は1971年に創薬研究を始め、最初のテーマの中に結核があった。当時の社長、故大塚明彦氏肝煎りだった。リファンピシンの登場で世界の研究は下火になったが、同社は薬が一つだけでは感染防止に不十分と継続した。研究開発のビジョンに「他社がまねできない製品」とありデラマニドは象徴といえる。

大塚ホールディングスの2016年12月期の医療関連事業の連結売上高は7530億円。年間1000億円を売る大型薬はない。抗精神病薬「エビリファイ」があったが15年に特許が切れ、同「レキサルティ」や抗がん剤「ロンサーフ」などの販売に期待している。

大塚製薬は重点領域として中枢神経、がんに加え結核を挙げる。当面の目標は症例を積み上げることで、20年までの累計を現在の5倍近い2万症例にする。今も新興国から供給してほしいとの要望が外務省や厚生労働省を通じて伝えられており、一段の販路や医師への情報提供体制の構築が欠かせない。

▼結核 結核菌が体に入って起こる。空気感染し、主に肺の内部で増えてせきやたん、呼吸困難の症状があらわれる。他の臓器や骨、脳に影響し、血を吐くなどして死亡することも多い。世界の総人口の3分の1は結核菌に感染していても発症していない。他の人にうつさない潜在性の結核感染症に罹患(りかん)しており、加齢などでのちに発症するケースがある。

(企業報道部 安西明秀)

[日経産業新聞2017年11月7日付]

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