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競争促すプラン次々 ロッテ・井口新監督始動

ロッテの井口資仁新監督(42)が始動した。10月の就任記者会見で「マリーンズを常勝球団にしたい」と高らかに宣言。2軍施設での秋季練習から鴨川キャンプと、さっそく選手たちにはハードトレーニングを課し、チーム最年長のいわば"兄貴分"のようなこれまでの立場から、指揮官としての表情に変わっている。

現役時代と同じ背番号「6」のユニホームを手に笑顔の井口監督=共同

10月14日、千葉市内のホテルで行われた就任会見で、新監督就任までの経緯が明かされた。8月上旬に伊東勤前監督が辞意を伝えてきたのを受け、新監督の選定を進め、同月後半に今季限りでの現役引退を明らかにしていた井口に打診したという。指導者経験なしでの監督就任を不安視する声があるのは承知の上で、山室晋也球団社長は「いつもベンチで試合を分析し、選手たちがどんなことで悩んでいるか、技術的にどんな壁にぶちあたっているか観察していると聞いたことがある。誰よりもチームの弱点、進むべき道を知っているということ。何より選手たちとのコミュニケーションができあがっており、すぐにいまのチームを変えることができる監督になれると判断した」と説明する。

日米それぞれの長所、自分の色に

加えて、個人記録だけではないその球歴は魅力だったろう。ドラフト1位指名で1997年に福岡ダイエーホークスに入団すると、99年にダイエーのパ・リーグ初優勝と日本一に貢献。翌2000年にもリーグ連覇を果たし、03年には再び日本シリーズを制した。05年に米メジャーへ活躍の舞台を移し、シカゴ・ホワイトソックスでいきなりワールドシリーズ制覇。日米両方でのシリーズ優勝は日本人選手初だった。米国で4シーズンを過ごし、09年からはロッテでプレー。すると、ここでも10年にレギュラーシーズン3位からクライマックスシリーズを勝ち上がり、日本シリーズでも中日を4勝2敗1引き分けで下して、いわゆる「下克上」を果たした。

ホワイトソックスOBとして9月、エンゼルス戦の始球式を務めた=共同

行く先々でタイトルをつかんできたそのキャリアはまさに「勝ち方を知っている」(山室社長)。メジャー経験がある日本人の1軍監督は初めて。それでも井口自身は「すべてメジャーがいいわけではない。日米両方のいいところを自分の色として出していけたら」と柔軟な姿勢で取り組む構えだ。

今季は優勝争いに絡むことなく、パ・リーグ最下位に終わった。再建も一朝一夕にはいかないだろうが、井口監督から悲観論は出てこない。再三口にするのが「マリーンズはこんな成績で終わるチームじゃない」との表現。今季の日本一ソフトバンクをはじめ、長年パ・リーグの各チームと戦ってきた上での言葉には、いまいる選手の潜在能力に手応えを持っているがゆえだろう。

監督就任後、主力選手たちとの初顔合わせとなったロッテ浦和球場での秋季練習(10月21日)は、選手に「もう一回原点に戻って、ポジションを勝ち取ってほしい」と呼びかけて始まった。すると、いきなり井口カラーが見えた。初日は体を動かす程度で終了かと思ったら、昼前の全体練習の最後にしっかりと打撃練習を行った。室内練習場の8カ所でのロングティー。しかも補助役が球をトスするのでなく、バッティングティーに置いた球を打つ「置きティー」をテンポを上げて行った。「バットが内から出るように」と同じく新任の金森栄治打撃コーチの発案で、カート2箱分、200球以上を振り込んだ。

ロッテは1日、来季に向けて秋季キャンプを開始した=共同

さらに午後は4年目の吉田裕太、7年目の江村直也の捕手2人をピックアップして打撃練習をさらに約3時間。午前10時から計6時間半に及ぶハードな初日のメニューを終え、吉田は「軸足が動く癖をすぐに指摘された。『少しずつやっていこう』と言われました」と疲労感を見せながら充実した表情。金森コーチは「監督からは『若い人には厳しく、たくさん振らせてくれ』と言われた。(居残り練習は)本人からやりたいと言ってくれればいいのだが。プロなんだから、自分のためだからね」と語った。

11月1日からは千葉県鴨川市で秋季キャンプがスタート。その前日ミーティングで、井口監督は「投手は原点となるストレートの切れを取り戻すこと。困ったときは真っすぐで空振り、ファウルがとれるくらいに。そして打者はその真っすぐを打ち返せるよう、下半身を使ったフルスイング」を求めた。「今年は相手の速い球に打ち負ける、振り遅れるシーンが多々あった。その真っすぐを打てないと、七~九回に出てくる(球威のある)後ろの投手は打てない」と付け加えたあたりは、この間まで選手と同じ目線で試合を見てきたからこそいえる指摘だろう。

春季キャンプ、実戦中心で

5日、紅白戦を行った=共同

「初日から実戦ができるような体をつくってきてもらう。投手は初日からバッティング投手ができるように、と投手コーチには話してある」「バットの振り込み、走り込みの一方で、実戦中心でやっていく。スタートは早く、全体的には短くなる。(夜間練習は)やってもらっていいが、基本的にはグラウンドの中で終わるように。グラウンドで出し切って帰ってほしい」

就任会見時に明かした、春のキャンプに向けたこうしたプランには、キャンプ中に無駄な時間のない米国流の一端がうかがえる。秋季キャンプも、従来より1時間早い朝9時始動。初日から練習時間はトータル9時間に及んだという。また1軍、2軍の境界をなくす方針だ。もともと石垣島キャンプは、1軍はメイン球場、2軍が第2球場と同じ運動公園内で行っており、いつでも入れ替え可能だったが、新監督はこの垣根を取っ払うという。「球場をまんべんなく使って、効率よく、待ち時間がないようにしたい。時間のロスをなくし、早く全体練習を終わって、各自の自主トレができるように」

そうして個々が取り組んだ成果を見せる場として、実戦のチャンスはたくさん設定されることになりそう。秋季キャンプでもさっそく5日に紅白戦を行った。今季二塁を守った主将・鈴木大地と、三塁が主だった中村奨吾を入れ替えて配置するなど、約5500人のファンに来季の新たな布陣をお披露目した。試合は活発な点の取り合いとなり、14-7で白組が勝利した。平沢大河が3安打猛打賞、大嶺翔太は果敢な走塁で三塁打2本を含む4安打5打点の大暴れした。就任会見で「攻撃的な野球をしたい。走れる選手が多いので、機動力を使った野球ができれば、うちの持ち味がもっと発揮できる」と語った新監督を喜ばせた。

井口監督のメッセージが書かれた当たりくじと色紙を手にポーズをとる安田=共同

さらに10日からは台湾に遠征して台湾代表チームとの交流試合3試合が組まれている。「対敵というよりは、まずチーム内の競争を激しくしていかないといけない」「空いているポジションはたくさんある」と話す新監督だけに、競争を促す様々な取り組みが展開されそうだ。

1位指名の安田は「即戦力」

自分がどんな課題を抱え、どのような取り組みでそれに対処していくか。来季に向けて、選手たちは秋季キャンプ、その後のオフの過ごし方をしっかりと考えることが必要となる。もちろん、それは先日指名されたばかりのルーキーたちにもいえる。将来性豊かなドラフト1位、安田尚憲(大阪・履正社高)を「アベレージも長打力もあり、即戦力と考えている。レギュラーを取るつもりで全力で来てほしい」と評価する新監督。与えられたチャンスで「これは」と思わせる成果を見せられれば、この18歳の姿が開幕の1軍ベンチにあっても不思議はない。

(土田昌隆)

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