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短期決戦の命運左右 「流れ」のつかみ方

DeNAがプロ野球のクライマックスシリーズ(CS)を制し、19年ぶり3度目の日本シリーズに駒を進めた。セ・リーグでCSが始まったのは2007年。3位球団が勝ち上がったのは初めてのことだ。

DeNAのCS快進撃では「流れ」が大きくものをいった=共同

レギュラーシーズンのDeNAは巨人とのデッドヒートを繰り広げ、残り2試合で3位を決めた。阪神とのCSファーストステージでは初戦を落としたが、雨の中での第2戦で打線が21安打13得点と爆発して逆転勝ち。勢いそのままに第3戦も完勝した。

広島とのファイナルステージでは降雨コールドで初戦を落とし、アドバンテージを含めて「0勝2敗」となった。しかしそこから反撃した。ルーキー左腕・浜口遙大の好投で第2戦を取ると第3戦は7人の継投がはまって1-0で連勝。DeNAに傾いた流れは雨による2日の順延を挟んでも変わらず、第4、5戦とも打線がビハインドを跳ね返し、4連勝で王者広島を下した。

広島は今年のセで最強だったが…

DeNAの快進撃では「流れ」が大きくものをいった。広島は紛れもなく今年のセ・リーグで最も強かった。日本シリーズに出ればソフトバンクとがっぷり四つで熱戦になっていただろう。しかしCSではシーズンで14.5ゲーム差をつけたDeNA相手に流れをつかめぬままだった。菊池涼介や丸佳浩らに本来の躍動感がなく、打線に活気が出なかった。4番の鈴木誠也を故障で欠いたのも痛い。一方のDeNAは継投をはじめアレックス・ラミレス監督の選手起用がズバズバと的中、後半は打線も爆発した。

よく指摘されるように、短期決戦では「流れ」が命運を左右する。流れがいいときは何をやっても不思議なほどうまくいく。抜てきした選手が活躍し、ボテボテの当たりが安打になる。ミスさえ幸いすることがあり、実力以上のものが出る。逆に流れが悪くなると、何をしても歯車がかみ合わない。CSの広島はいい当たりが正面を突き、ヒット・エンド・ランをかければ空振りをし、継投も裏目に出てしまった。

CSファイナルステージで広島はDeNA相手に流れをつかめぬままだった=共同

ペナントレースにも流れはある。だが半年以上をかけて143試合も戦っていれば潮目は何度も変わる。どこのチームにも流れが来たり離れたりする。5~6月にかけて球団ワーストの13連敗を喫した巨人も夏場は巻き返し、Aクラスまであと一歩に迫った。つまり、巨人のような実力があるチームでも悪い流れに巻き込まれるとあらがうことは難しく、それでもトータルではおおむね実力通りに落ち着くということだ。

ところが短期決戦は違う。どちらかが一度流れをつかむと、潮目が変わる前に終わってしまうということが起こり得る。今回のDeNAはこのパターンだった。

流れをつくるきっかけになるのが「勢い」だ。引き分けでもシーズンが終わるという阪神との2試合を生き残ったDeNAは願ってもない勢いを得た。かたや広島はレギュラーシーズンが終わってから約半月の空白があった。1勝のアドバンテージをもらっても、助走をつけて加速してくる挑戦者を止まった状態で受け止めるのは容易ではない。

思い出すのは2004年の日本シリーズだ。当時、セに先立ってプレーオフ制度を導入していたパを勝ち抜いたのはシーズン2位の西武だった。日本シリーズはセの覇者・中日が有利とみられていたが、西武の勢いは予想以上だった。とにかく元気はつらつ、バッターはよく振れている。最初から「これは強いな」と感じた。中日は第5戦を終えて3勝2敗とリードしたが、最後は西武の勢いにのまれて連敗した。

最も手っ取り早く勢いを生むのは打線の爆発だ。04年の西武は満塁弾を含めて3本塁打を放った4番のアレックス・カブレラを筆頭によく打った。CSでのDeNAも雨中の甲子園での猛打で活気づいた。

CSファイナルステージではソフトバンクの「止める力」が光った=共同

ピンチの後にチャンスあり

逆にいえば、勢いに乗る相手を止めるには投手がピシャリと抑えればいい。燃え上がっている打線を鎮火させれば、流れは簡単には相手にいかない。例えばCSファイナルステージのソフトバンク。ファーストステージを逆転で勝ち上がってきた楽天に最初の2試合で連敗した。しかし第3、4戦で自慢の救援陣が踏ん張って接戦を取ると、第5戦は7-0と完勝を収めた。ソフトバンクの「止める力」が光る戦いぶりだった。

もってくる苦労に比べ、流れを手放すのは簡単だ。バントの失敗、無意味な四球、取れるアウトの取りこぼしなどは要注意。日本シリーズ第2戦はDeNAリードの七回、遊撃・倉本寿彦の失策から流れがソフトバンクに傾き、リプレー検証による逆転劇につながった。

「ピンチの後にチャンスあり」はその通り。投手からすると、味方が得点のチャンスを逃した後は用心しないといけない。こういうとき、私は意識して集中力を高めてマウンドに登った。実際に結果が変わるのかは分からない。それでも何回かに一度は違うこともあるだろう。そう信じて投げた。

統計的にみれば先制点を取ったチームの7割は勝ち、先頭打者をアウトにするだけで失点のリスクは半分になる。だから先発投手の仕事は各イニングの先頭を打ち取り、先制点を与えないことだ。試合には分岐点になりやすい「要所」がある。流れを操作するのは難しいが、要所を押さえれば引き寄せられる確率は上がる。強いチームとは「いい流れを呼び、それを手放さない野球ができる」ということでもあるのだ。

(野球評論家)

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