運送業者と国の和解成立 石綿訴訟、最高裁判決の枠組みで初
紡績工場で作業中にアスベスト(石綿)を吸い込み健康被害を受けたとして、大阪府泉南市の運送会社の元従業員、伊藤利幸さん(67)が国に1265万円の損害賠償を求めた訴訟は1日、国が請求された全額を支払う内容の和解が大阪地裁で成立した。
大阪アスベスト弁護団によると、国の賠償責任が確定した2014年の「泉南アスベスト訴訟」最高裁判決の枠組みに基づく運送業者の和解は初めて。
厚生労働省は10月、国家賠償を受けられる可能性のある元労働者らに国賠訴訟を促す通知の発送を始めた。ただ、通知対象は工場労働者に限られているとみられ、同弁護団は「潜在的な救済対象者は多いはずだ。厚労省は荷物の搬出入や設備のメンテナンスのために工場内で作業した業者の実態把握に努めてほしい」としている。
訴状などによると、伊藤さんは1969~89年、大阪府泉南地域の工場で、石綿原料の搬入や製品出荷時の積み込み作業に従事した。その際、石綿を含む粉じんを吸い込み、退職後の2016年に中皮腫を発症した。