2017年11月22日(水)

アルゼンチンやブラジル、硬直的な労働市場にメス 雇用・投資増促す

中南米
2017/10/31 19:36
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 【サンパウロ=外山尚之】アルゼンチンやブラジルで、労働者に手厚い一方で企業の採用や投資を手控えさせてきた雇用・労働法制の見直しが始まる。アルゼンチンのマクリ大統領は10月30日、労働法改革に着手する意向を表明。ブラジルでは約70年ぶりの抜本改革となる改正労働法が11月に施行される。一連の改革が雇用や投資の増加を促し、経済の底上げにつながるかどうかが焦点だ。

 マクリ氏は30日、経済政策について演説した。「労働裁判マフィアは雇用創出の最大の敵だ」と述べ、労働組合を示唆する「マフィア」を激しく批判した。自ら率いる与党が22日の選挙で勝利したのを受け、労働法制改革に取り組む姿勢を示した。

 同国では労働者の支持を集める正義党(ペロン党)が政界で長く影響を及ぼし、労働組合の発言力が強い。ストライキの多発や解雇金を巡る労働争議が絶えず、企業の負担になってきた。

 企業は正社員の採用に及び腰となり、同国では社会保障制度の適用対象外となる下請けや期限つき雇用を多用しがちだ。「正社員以外の労働者の比率は3分の1に上る」(レドラド元中央銀行総裁)との指摘もある。

 アルゼンチン養豚生産者協会のフアン・ウッセーリ会長は「労働者の権利は保護されるべきだが、労務費は現実に適応しなければならない」と改革始動を歓迎する。法律事務所マルバルのルシアノ・オヘア弁護士は「政権は労働市場に公平性を導入しようとしている。市場が柔軟になればアルゼンチンの競争力は高まる」と評価する。

 アルゼンチンと同じく労働者優位が目立つブラジルでも労働改革が進む。11月に施行する改正労働法は短時間勤務の弾力的な運用を認めるほか、労組による組合費強制徴収の廃止や労働裁判の訴訟抑制など労働側の既得権にメスを入れる項目が並ぶ。

 資源大手ヴァーレのシュアルツマン最高経営責任者(CEO)が「硬直的な労働制度を改めるのは重要な一歩だ」と話すなど、経済界の評価はおおむね高い。

 両国政府が改革を急ぐのは、10年以上続いた左派政権下で競争力が落ち込み、投資や雇用への影響が無視できなくなっているからだ。

 スイスのIMDがまとめた「世界競争力ランキング」では、アルゼンチンは63カ国中58位、ブラジルは61位と最下位付近で低迷する。硬直化した労働市場や保護主義的な貿易政策が敬遠され、同じ中南米で改革を進めたメキシコやチリに投資が流出した。

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