2017年11月19日(日)

「皇帝」プーチン後への憂い
権力闘争、国分断の可能性

コラム(国際・アジア)
ヨーロッパ
The Economist
(1/2ページ)
2017/11/1 6:30
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The Economist

 最初に大統領に就任してから17年が経過した今、ウラジーミル・プーチン氏のロシア支配はかつてないほど強固だ。この国を今でもソ連崩壊後の観点から見ている西側諸国は時折、プーチン氏のことを(旧ソ連の独裁者の)スターリン以来最強の指導者と位置付けている。

 だが、ロシア国民は次第にもっと昔の時代に目を向け始めている。モスクワでは、リベラルな改革派も保守的な伝統主義者も、21世紀の皇帝(ツァーリ)としてのプーチン氏について語るようになっているのだ。

 プーチン氏がこの称号を手にしたのは、多くのロシア国民が混沌と見なす1990年代の状況からこの国を引き上げ、世界で一目置かれる国に戻したからだ。しかし、ロシア革命から100年が近づくにつれ、プーチン氏はツァーリと同じ弱点も抱えているという不穏な見方が浮上している。

後継者の決定を巡っては大きな混乱も想定される(10月26日、モスクワのクレムリンの会合に出席するプーチン大統領)=AP

後継者の決定を巡っては大きな混乱も想定される(10月26日、モスクワのクレムリンの会合に出席するプーチン大統領)=AP

 プーチン氏は旧ソ連諸国を席巻した(親欧米の)「カラー革命」を心配しているが、実はそれ以上に大きな脅威が存在する。大衆蜂起や共産党の復活ではない。それは、勝利が確実視される大統領選挙の後、プーチン氏が憲法上最後となる6年の任期に入る2018年春から、次に何が起こるかという臆測が流れ始めることだ。ほかのロシアの支配者と同様に「ウラジーミル皇帝」も混乱と大変動をもたらして去って行くのではないか、との恐怖心が強まっていくだろう。

■権力をオブラートにくるむ

 プーチン氏は決して世界唯一の専制君主ではない。過去15年間で、個人に権力が集中する権威主義的な支配体制は世界に広がった。その多くはプーチン氏の場合と同様に、巧みに操作された勝者総取り方式の民主主義の脆弱な基盤の上に築かれている。

 トルコのエルドアン大統領だけでなくインドのモディ首相もが、自分は民意から直接授かった特別な権限を持っているのだと言わんばかりの振る舞いを見せてきた。その先鞭(せんべん)をつけたのが、プーチン氏が掲げるタイプの権威主義だった。これは帝政ロシアの歴史を呼び覚まし、権力とはどのように働き、どのように道を誤る可能性があるかをまざまざと見せつけてくれる。

 プーチン氏は庇護(ひご)する者とされる者の上下関係から成るピラミッドの頂点に君臨している。01年に新興財閥に立ち向かい、メディアや石油・ガスの巨大企業を支配下に置いて以来、権力とカネに通じる道はすべてプーチン氏を経由することになった。今日では帝政時代の貴族階級に似た特権階級がプーチン氏の意のままに使われている。そうした特権階級がその下に位置するグループを使うという構造が階段状に連なっている。

 プーチン氏は権力をむき出しにはせず、合法的な手続きというオブラートにくるんでいるが、検察官や裁判官が同氏の言いなりであることは誰もが知るところだ。国民によるプーチン氏への支持率が80%を超えているのは、ある側近の言う「プーチンがいなければ、ロシアもなくなる」という文句をロシア国民に信じ込ませたためでもある。

■政治が経済を牛じる代償

 プーチン氏はツァーリと同じように、ピョートル大帝以降のロシアの指導者たちを悩ませた問題にも直面している。ロシアは西洋にならって公民権と代議制政体を受容することにより近代化すべきか、それとも逆にこれらを強く拒否することによって安定性を確保すべきか、という問題で、これにはロシア革命前にニコライ2世もひどく苦しめられた。

 プーチン氏が出した答えは、経済については自由主義志向の実務家に、政治については旧ソ連国家保安委員会(KGB)の元幹部らにそれぞれ委ねることだった。その結果、必然的に政治が経済を牛耳ることになり、ロシアはその代償を支払っている。(ウクライナ問題を巡る欧米による対ロ)制裁と通貨ルーブル安に見舞われた時期に上手に運営されたといっても、ロシア経済はまだ天然資源に依存しすぎている。実際、国内総生産(GDP)の成長率は年2%前後にすぎず、原油高の勢いに乗って5~10%の高成長を謳歌した00~08年とは大きく異なる。

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