2017年11月20日(月)

モノを自由に使えないデジタル時代の消費者
メーカーが遠隔制御 「所有」を制限

コラム(国際・アジア)
The Economist
(1/2ページ)
2017/11/3 6:30
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The Economist

 かつて、「(ものを)所有」するということは、小切手を切るのと同じくらい単純な行為だった。何かを購入したら、それを所有することになった。壊れたら修理をするし、不要になったら売るか捨てる、といった具合だ。

 一部の企業は、アフターサービス市場でもうける技を編み出した。有料の長期保証を導入したり、メーカーが認定する修理店を展開したり、あるいはプリンター本体の価格は安く抑えて、定期的に買い替えが必要なインクカートリッジを高値で売りつけるといった手法を発案した。

 ただ、利益をさらに絞り出すためのこうした手法が登場しても、何かを「所有する」という意味の本質が変わることはなかった。

アイロボットは同社の掃除機「ルンバ」が収集したユーザーの家の間取り情報を外部企業に売り込むことが可能と報じられた。同社は否定している

アイロボットは同社の掃除機「ルンバ」が収集したユーザーの家の間取り情報を外部企業に売り込むことが可能と報じられた。同社は否定している

 ところが、デジタル時代においては、「所有」という概念はつかみどころのないものに変わってしまった。例えば、米電気自動車(EV)メーカー、テスラの最高経営責任者(CEO)、イーロン・マスク氏は、米ウーバー・テクノロジーズなどのライドシェア企業においてテスラのクルマを購入し、そのクルマを使ってウーバーなどの運転手が働くことを禁じている。

 あるいは米トラクターの「ジョンディア」を所有する人は、それを制御するソフトウェアをいじらないよう“推奨”されている。スマートフォンが登場して以来、消費者はデバイスの中のソフトに手を加える権利を奪われ、単にその使用を許されているだけ、ということを受け入れざるを得なくなっている。

■危うくなる所有権

 だが、デジタル化が進み、自動車や温度自動調節器、そして性具にいたるまで、あらゆる機器がメーカー側の都合でこれらの機器を自由にする権利がますます制限される中、誰が何を「どこまで所有し」、「コントロールできるのか」という問題が生じつつある。消費者は、今や最も基本的な「所有権」というものが脅かされていることを認識すべきだ。

 こうした最近の流れは、決して悪いことばかりではない。メーカー各社が、ますます複雑な技術により所有者の行動を制限しようとするのには、それなりに正当な理由がある。具体的には、著作権の保護だったり、機械の故障を防ぐことだったり、環境基準を満たすためだったり、ハッキングを防止するためといった理由がある。

 場合によっては、メーカーがソフトを制御していることで、消費者が恩恵を受けるケースもある。例えば、9月に大型ハリケーン「イルマ」が米フロリダ州を襲った際、テスラは一部のモデルのソフトを遠隔で更新し、安全な場所へ避難できるようにバッテリーの寿命を延ばしたという。

 だが、商品にデジタルの面で様々な制限が課されれば課されるほど、商品の所有者よりも生産者の方が大きな裁量権を握るようになりつつある。これは、なかなか厄介な話だ。

 どのクルマを買うかを選ぶだけでも難しいのに、そのクルマの使い方がどのように制限されるのか、また、どういった個人データをメーカー側が収集するのか、といったことをクルマの仕様から読み解かなければならないとなれば、なおさら困難だ。

■プライバシーも脅かされる

 さらに、そうした仕組みによってメーカーの都合で商品が長くは使えないようになっていたら、消費者にとってはそれだけコストがかかることになる(注)。既に、スマホから洗濯機まで、あらゆる商品は修理がしにくくなっている。つまり、壊れたら修理されることはなく、廃棄されているのだ。

注)一部のスマートフォンは、電池がだめになっても電池だけを交換することができず、買い替えなければならないようなケースを指していると思われる。

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