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ミスをどう生かす ダルビッシュが問いかけた意味
スポーツライター 丹羽政善

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2017/10/30 6:30
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 「眼下の敵」(1957年、原題:The Enemy Below)という第2次世界大戦中の米海軍とドイツ海軍の戦いを描いた古い映画がある。米駆逐艦とドイツの潜水艦Uボートによる戦いの中、熾烈(しれつ)を極めた駆け引きを通じて両艦長が認め合うようになり、最後に両艦が衝突すると彼らは互いの艦上でついに顔を合わせ、そっと敬礼を交わすシーンが印象的だ。

 ただ、元英海軍中佐のデニーズ・レイナーが実体験をもとに書いた原作では、英海軍とドイツ海軍の戦いであり、最後、脱出のため同じ救命ボートに乗り移った両艦長が殴り合いを始めるという、どこか生々しい結末を迎えるという。

 敵との真の友情などきれい事、ということか。

 話は変わって、27日、アストロズとのワールドシリーズ第3戦のマウンドにドジャースのダルビッシュ有が上がった。彼自身、望んだ相手だった。

 「ずっとしのぎを削ってきた。ヒューストン(・アストロズ)とは、やりたいと思っていた」

 7月まで所属したレンジャーズとは同地区のライバル。14試合に先発し、5勝5敗の五分。今年の対戦は6月の2回だけだが、そのときの結果が興味深い。2日の試合では5回を投げて7安打、3失点で負け投手となり、10日後の12日は7回を投げて1安打、1失点で勝ち投手となった。そのとき、ダルビッシュがこんなことを言っている。

言葉の裏に相手への敬意

 「それまで自分のポテンシャルでやってきたけれど、(それでは)駄目だと気づかせてもらった」

 相手から学んだ――。その言葉の裏には、相手に対する深い敬意がうかがえた。

 さて、シリーズ初戦の試合前、フィールドでアストロズの打撃練習を見ていると、アロンゾ・パウエル打撃コーチ(元中日)が近づいてきた。まずは「おめでとう」と声をかけると、「あと4つ勝つまでその言葉は取っておいてくれ」と言われたが、もちろん、まんざらではない。第7戦までもつれ込んだヤンキースとの死闘を終えたばかりなのである。その後、ダルビッシュが前日の会見で「ヒューストンとやりたかった」と口にした内容などを伝えると、「あれだけの投手にそう言ってもらえるなら光栄だ」と笑みを返したが、「気づかせてもらった」という一言については複雑な表情を返した。

グリエルの対右投手のコース別打率
参照:BrooksBaseball.net

グリエルの対右投手のコース別打率
参照:BrooksBaseball.net

 「彼の成長はうれしいが、相手の立場としては気づかないでほしかった(笑)」

 その限りでは、彼らのダルビッシュに対するリスペクトも透けたが、現実は少し違ったのかもしれない。

 初回、ワールドシリーズ初登板で無難な立ち上がりを見せたダルビッシュだが、二回、内角高めのツーシームを2014年途中からDeNAでもプレーしたユリエスキ・グリエルに左翼席へ運ばれた。その場面を振り返って、ツーシームを待っているのは「わかっていた」とダルビッシュ。しかし、「あそこのコースは自分のデータだと大丈夫」という確信を持って投げ込んだのだという。実際、グリエルの対右投手のコース別打率を見ると、内角高めが弱い。ダルビッシュにしてみればやはり、狙い通りだった。

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