2018年12月17日(月)

起亜自、10年ぶり赤字 未払い賃金計上響く

2017/10/28 1:17
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韓国の起亜自動車は27日、2017年7~9月期の連結営業損益が10年ぶりの赤字に転落したと発表した。春先から続く世界販売の低迷に加え、従業員が会社側に未払い賃金の支払いを求めた訴訟を巡り、1兆ウォン(約1千億円)近い引当金を費用計上したため。労使の対立を招く同様の問題を抱える大企業は少なくない。回復の兆しが見えてきた韓国経済に水を差すとの懸念が広がっている。

起亜自の連結決算は、売上高が14兆1080億ウォン、営業損益が4270億ウォンの赤字(前年同期は5250億ウォンの黒字)だった。赤字は07年7~9月期以来。主力の中国と米国が前年割れし、世界販売が4%減の70万台弱にとどまった。17年通期では黒字を確保する見通しだ。

新型高級車を発売するなど攻めの姿勢はみられるが、収益貢献は振るわない(3月のソウルモーターショー)

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同社の従業員と労組は、残業代などを算定するベースとなる「通常賃金」に賞与が含まれていないのは違法だとして提訴。原告勝訴の一審判決が8月に出た。会社側は控訴したが、賞与が通常賃金とみなされれば残業代や社会保障費の負担が増えるため、9777億ウォンを引当金に計上した。

「訴訟の影響がなければ4371億ウォンの黒字だった」。財務担当の韓天洙(ハン・チョンス)副社長は27日の決算説明会で、苦渋の表情を浮かべた。アナリストからは、控訴審の見通しや今後の対策を問う質問が相次ぎ、労務問題に対する関心の高さをうかがわせた。

同副社長は「判決が覆る可能性もあるし、未払い額が減額される可能性もある」と控訴審に期待を寄せる一方、会社側の主張が退けられた場合について「人件費負担が増えることになるので、残業時間を無くすなどの措置をとらざるを得ない」と語った。

既に残業や休日出勤の抑制を現場に指示したことも明らかにした。ただ、工場の操業時間が短くなって生産量が減れば、車両の納期が延びて顧客に不利益が生じる。未払い賃金問題は会計上の損益だけでなく、現場の競争力という自動車メーカーの生命線を傷つける恐れがある。

起亜自と現代自動車が中心の現代自グループを巡る経営環境は厳しい。両社の労組は賃上げを求めて毎年のようにストライキを打つため、工場の生産性が落ちる問題が慢性化している。さらに、今年は在韓米軍の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)の配備問題の余波で中国販売が低迷。トランプ米大統領は米韓自由貿易協定(FTA)の再交渉を求めており、対米輸出にかかる関税が見直されるリスクも浮上している。

経済界には起亜自の一審判決に関して、労組を支持基盤とする文在寅大統領への政権交代が影響したとの見方もある。脱原発や法人税の引き上げなど文政権が取り組む政策は、韓国企業の「競争力を低下させ工場の海外移転を招く」(大手証券アナリスト)との声も少なくない。

半導体がけん引する韓国経済は、7~9月期の実質国内総生産(GDP、速報値)が前期比1.4%増えるなど回復の兆しがでてきた。しかし、基幹産業の自動車で賃金や税金といった競争力の阻害要因が増えるようだと、経済の本格的な回復が足踏みしかねない。

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