長野県など、県立大を産学官金の連携拠点に
長野県などは27日、2018年4月開学の長野県立大学に設置する「ソーシャル・イノベーション創出センター(CSI)」構想の概要を発表した。県内外の社会起業家や専門家がアドバイザーとして事業・創業支援を手掛けるほか、社会人を募集する「イノベーション・キュレーター塾」を設ける。産学官金の連携拠点としての県立大の役割が鮮明になり始めた。

「中山間地を多く抱える長野県は課題の最先端地域。だからこそイノベーション(革新)を起こして次の時代を開くことができる」。同日の記者会見で、阿部守一知事は力を込めた。
CSIが手掛ける社会的課題は「飢餓をゼロに」「安全な水とトイレを世界中に」など、「持続的な開発目標(SDGs)」と呼ぶ17のテーマだ。センター長に就く予定の大室悦賀・京都産業大学教授によれば、同様の施設は京都市の研究所に例があるものの、大学では国内初という。同氏は「持続可能な企業がないと持続可能な地域にはならない。企業支援を通じて長野を持続可能な地域にしたい」と抱負を話す。
CSI構想の大枠はこうだ。地域の企業に学生を派遣して社会と大学との接点を増やし、大学の知を地域に還元。一方、企業側で起こった地域イノベーションを手本として学生に示すことで、次世代のイノベーターを育てる――。知と実践の循環を生み出すことで、地域社会の発達につなげる狙いがある。
県内には長野市の後町キャンパス内に設置するセンターの他に、塩尻市が来春設立する松本広域圏イノベーションプラザ(仮称)内にもサテライト(衛星)オフィスを設置。将来の拠点網の拡充も含め、県全体での支援体制を整える。
このほかイノベーション・キュレーター塾と題して社会人15~20人ほどを募集。イノベーターや伴走支援を手掛ける「キュレーター」を育てる。県内の事業者支援は慶応大学の井上英之・特別招聘(しょうへい)准教授や、就労困難者を積極的に雇用している中古タイヤ販売のアップライジング(宇都宮市)を経営する斎藤幸一社長らの企業家・専門家が担う。
記者会見には長野県や県立大学関係者に加え、CSIが拠点を置く長野市と塩尻市、資金を融通する八十二銀行、既に取り組みを始めている木曽地域振興局などが参加した。CSIの取り組みは今後の産学官金連携の試金石となる。
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