2019年8月26日(月)

1冊からOK、オンデマンド出版広がる 絶版本も

2017/10/30 6:30
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本の注文を1冊から受け付ける「プリント・オン・デマンド(POD)」の活用が広がっている。電子書籍取次大手の出版デジタル機構(東京・千代田)はアマゾンジャパン(同・目黒)などに加え、6月から楽天を通じて本格的にサービスを始めた。大日本印刷もオンライン書店で企業や個人から年40万冊の注文を受ける。三省堂書店(同・千代田)は注文から受け渡しまで30分で終えるスピードが売りで、9月からカラー印刷にも対応した。

三省堂は注文を受けた書籍を最短30分で印刷・製本する

三省堂は注文を受けた書籍を最短30分で印刷・製本する

通常の印刷は数千部や数百部から対応するが、PODは1冊でも請け負う。型版を使わず、デジタルデータから必要な時に必要な部数だけ印刷できる。たまにしか売れないが一定の需要はある「ロングテール商品」の提供に適している。

出版社は在庫リスクや保管費用を減らせるほか、絶版となった本もPOD向けのデータさえあれば販売できる。印刷機の性能によっては文字がにじみやすくなるといった課題はあるが、企業や個人の利用がじわじわと広がっている。

デジタル機構は約160社の出版社と契約し、1万3000冊の本のPODデータを、取引している書店に提供する。

楽天は6月、オンライン書店「楽天ブックス」と契約する全国2000以上の書店で、PODの注文を受け付けるサービスを始めた。消費者は最短で4日後に本を受け取れる。書店は店頭在庫がないことによる販売機会の損失を回避できる。

大日本印刷は2008年、運営するオンライン書店「honto(ホント)」でPODを受け付けている。作業工程が短く、最速で注文の翌日には利用者の自宅に届ける。利用者の8割が男性で、30~50代が半数以上を占める。注文の多くは図書館に洋書などを納品する書店からだが、個人による利用も約1割まで増えている。

三省堂書店は神保町本店(同・千代田)で10年にPODのサービスを始めた。POD注文に対応するタイトル数は2年前から急増し、現在は7割増の約2万冊をそろえる。店頭のタブレット端末などで注文すると、店内の印刷機ですぐに製造。30分足らずで利用者に手渡しする。

16年の出版市場は1兆4709億円と、前年実績を12年連続で下回った。出版不況が続くなか、柔軟な注文に対応できるPODが注目されている。

ただ課題もある。POD用の書籍データは出版社が制作し、書店は専用の印刷機を導入しなければいけない。投資を回収できるだけの売上高を見込めず、PODの導入に二の足を踏む出版社や書店は少なくない。1冊あたりの印刷コストも通常より高くなる。

通常の本は出版社が定価を決める「再販制度」に基づいて書店に流通する。しかし、PODの本は制度の対象外で、書店側が本の売値を決められる。そのため本が売れた時の取り分などを決める契約を、出版社と新たに結ぶ手間がかかることも課題になっている。

(企業報道部 亀井慶一)

[日経産業新聞 2017年10年30日]

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