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角谷貞之助氏 勝負するのは1年に1度
市場経済研究所代表 鍋島高明

2017/11/11 5:30
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 明治後半から昭和初期にかけて米相場の町、日本橋蛎殻町で存在感を発揮する米穀仲買、角谷貞之助の地場評は上々である。

 「手腕も相応にさえていて、非常に信用を置かれているという話である」(岡本鷸園他著「兜街繁昌記」)

 ここで手腕とは角谷の相場の才を意味し、信用とは顧客を大事にすることを指す。

 また「日本米界人名辞彙」(東京毎夕新聞社刊、明治44年)には以下のように記されている。

 「氏は幼少のころより伴田六之助氏に仕え、専心定期業に励み、長ずるに及んでその脊遇(けんぐう。特に目をかけること)を受けて累進して現在の要地を獲守するに至る。斯道(相場道)の経験家にして取引高は、しばしば優良の成績を示し、賞状、賞牌を贈与されたること少なからず。信用深甚の仲買店主なり」

 上記文中にある伴田六之助とは大阪出身の大手米穀商で、この店からは多くの人材が出ている。角谷は伴田のもとで相場を修業したのち、伴田の支援を得て日本橋蛎殻町で仲買店を開業する。そして伴田の実弟、大沢幸次郎は「ドテンの幸次郎」といわれるほど目まぐるしく売買のポジションを変転させたことで名を成す。

 角谷も大沢とは親しく交流しているはずである。だが、角谷の相場戦法はどっしり構える大勢張りで、大沢とは対照的である。昭和初年、相場戦術について新聞記者の取材に答えて語る。

 「長年この町(蛎殻町)におりますから、買い占めやら玉倒しやら、いろいろのことを目撃してきましたが、結局は大勢に逆らった者は負けるということを覚りました。機会の熟したときは、あえて10万石、20万石の出動を要せず、わずか100石の玉で一気に放れるもので、人為はとうてい大勢には敵しません。それが証拠に政府が一生懸命、米穀法を振り回して米価の釣り上げを図っても上がらない相場は上がらず……」

 確かに政府が米価浮揚を図って在庫隔離などやっても上がらないものは上がらない。かつて「わが意の如くならぬはサイの目と米相場」と時の権力者をしばしば悩ませたのがコメである。また、角谷がいう「玉倒し」とは、買い占めの反対に売り玉をぶつけて相場を崩してしまうこと。

 当時は米価の調節、安定は政府の重要課題であった。高騰すると消費者サイドから文句が出る。その極端な例が大正7年の米騒動であり、暴落すると生産農家が悲鳴を上げ、大手米穀商や時には相場師を使って米価の浮場に国費を投じたこともある。

 たった1人の買い方に向かって、売り方が総がかりになって売りまくっても1カ月足らずで1石(150キロ)当たり10円も暴騰することだってある。こうした人為策は相場には通用しないことを角谷は熟知している。角谷はいう。

 「平常は傍観していて1年に1度でも、2年に1度でもぐっと腹に感じた時に出動すれば恐らく外れることはない。ところが、相場好きとなると、1日でも持ち玉がないと寂しくて、世の中から遠ざかっていくような気がするのですが、これがいけないのです」

 囲碁でいう「岡目八目」ではないが、相場も建玉しないで見ているとよく分かるものだと角谷はいう。そして「ぐっと腹に感じた時」にここぞと勝負に出る。勝負に出るのは1年に1度か、2年に1度というが、それだけ待つのは相当な忍耐と精神力を要するだろう。

 「相場は売り方買い方に取って、お互いに戦争であっても、命を狙う戦争ではないのだから、戦いに勝っても、しつこく相手を追い詰めるのは見る目もみにくいし、また福を転じてわざわいとなす例が多い」。角谷は相手の命までは取るなという。角谷という相場師のやさしさが読み取れる。=敬称略

信条
・大勢に逆らうな
・人為は大勢にはかなわない
・休むと相場はよくみえる
・ぐっと腹に感じた時出動する

( かくたに ていのすけ 1869-没年不詳 )
 明治12年東京都出身、大手米穀商で仲買人の伴田六之助のもとで少年店員として働き、同20年貿易商・菱谷商会で海外貿易を見習い、同26年東京米穀取引所仲買人となる。屋号は「澤」。売買高ランキングではコンスタントに上位を占め、しばしば入賞、「君の着実な営業振りは社会の信を受けること厚く、顧客は常に門前に幅輳(そう)す」(大正人名辞典)
(写真は東京毎夕新聞社刊「日本米界人名辞彙」より)

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