シェール革命2.0 崩れる境界
脱・買うだけ 米に出城

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2017/10/28 6:30
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米国を起点とするシェール革命の波が日本に及んできた。日本企業が米国でシェールガスを原料に使う液化天然ガス(LNG)の生産に乗り出し、2018年初頭にも第1便が日本に到着する。米国産LNGは世界のエネルギー供給を変え、これを好機ととらえる日本企業も出ている。激変するLNGビジネスの最前線を報告する。

東京ガスや住友商事が参加するコーブポイントLNG(米メリーランド州)

東京ガスや住友商事が参加するコーブポイントLNG(米メリーランド州)

米テキサス州フリーポート。同州の中心都市ヒューストンからおよそ100キロメートル離れたこの地では、メキシコ湾に向かって3本の塔がそびえ立っていた。天然ガスを冷やして液化するLNGプラントの心臓部である主熱交換器だ。

「高さは50メートル。8月までに3つの生産設備ですべての設置を終えた」。フリーポートLNG社のロバート・ペイト生産部長は語った。

フリーポートLNGは年産464万トンの設備を3系列持つ。第1系列は東京電力ホールディングス中部電力が燃料事業を統合したJERA(東京・中央)と大阪ガス向け、第3系列は東芝と韓国SK E&S向けだ。

ペイト部長は「第1系列は全体の73%、第3系列は59%まで工事が進んだ」と説明した。順調に進めば第1、2系列は2018年10~12月、第3系列は19年7~9月に生産を始める。

フリーポートは海外からLNGを輸入するための受け入れ基地としてスタートした。しかし、シェール革命による米国での天然ガス生産の急増を受けて輸出施設に転用された。JERAや大阪ガスが事業に加わった。

本来、電力、ガス会社はLNGの大口ユーザーだ。だが、JERAと大阪ガスは生産したLNGを引き取るだけでなく、フリーポートの液化設備の5割を保有し、生産にもかかわる。

両社はオーストラリアなどのLNGプロジェクトに少数比率で参加したことはある。それでも、ここまで川上の領域に踏み込むのは初めてだ。

日本にとって、世界最大のLNG生産国になる可能性がある米国からの輸入は、調達先の多様化につながる。米国産LNGの価格は米天然ガス市場に応じて決まり、荷揚げ地が限定されるアジアや中東産のLNGに比べて自由に転売できるなど取引条件も柔軟だ。

18日に都内で開かれた「LNG産消会議」で世耕弘成経産相は「米国産LNGにより、欧州、北米、アジアの天然ガス市場がつながる」と述べ、米国産の輸出がアジアのLNG利用拡大を促すことへの期待を示した。

利点はそれだけでない。JERAの佐藤裕紀執行役員は電力会社が生産に関与する意義を「生産から輸送まですべてのバリューチェーンに関与することでコスト構造を透明化できる」と説く。

大阪ガスUSAの篠原岳副社長も「すべて自分たちでできるようになれば、他のLNGの買い手と差別化でき、案件の質を見極められる」と語る。両社は生産設備の建設現場に社員を送り、貪欲にノウハウを吸収する。

巨額投資と回収に長い時間を要するLNG開発は、これまでメジャー(国際石油資本)と商社の独壇場だった。電力・ガス会社の生産への進出により、売り手と買い手の境界が消失しつつある。

商社も押し込まれているばかりではない。

ヒューストンから約250キロメートル離れたルイジアナ州キャメロン。三菱商事三井物産が米エネルギー大手センプラなどと建設するLNG生産プラントが現れる。LNG受け入れ基地を転用、2平方キロメートルの広大な敷地に年産400万トンの生産プラントを3系列新設する。

「故郷に貢献したい」。キャメロンLNGで操業の責任者を務めるダン・カレンズ上級副社長は語った。カレンズ氏は米メジャー、エクソンモービルに在籍していた。世界最大のLNG生産国カタールで巨大プラントの立ち上げにかかわり、パプアニューギニアやロシア・サハリンなど世界中の現場を経験した。

ルイジアナ州出身のカレンズ氏は、キャメロン事業の話を聞き、はせ参じた。米国はシェールガスの生産では先行するが、LNGは未知の世界。安定操業を果たすには、いかに経験者を集めるかがカギとなる。総勢220人のキャメロンLNG社にはカレンズ氏のほか、中東やアフリカ、カリブ海など、世界中のLNG経験者が集まる。

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