2019年1月19日(土)

トヨタ創始者の夢「佐吉電池」 能力2倍の次世代型開発

2017/10/25 20:43
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トヨタ自動車は25日、2020年代前半に電気自動車(EV)などの航続距離が大幅に延びる次世代の「全固体電池」を実用化する方針を明らかにした。200人超の技術者が開発を進めているという。グループ創始者の豊田佐吉氏が多額の懸賞金で高性能蓄電池の発明を募ってから約90年。新型電池はトヨタのEV戦略の切り札になるか。

豊田佐吉翁

トヨタ自動車のコンセプトEV「トヨタ コンセプト愛i」(25日午前、東京都江東区の東京ビッグサイト)

東京モーターショーでひときわ目立つトヨタのブース。中央には目玉の「トヨタ コンセプト愛i」が展示されていた。運転手の感情や嗜好を読み取る人工知能(AI)で運転を支援する未来の車だ。その説明文に1月の米家電見本市で披露したときになかった内容があった。駆動装置を「EV」と明記していた。

「EVが近い将来、重要なソリューションのひとつとなることに疑う余地はない」。記者説明会でトヨタのディディエ・ルロワ副社長はEV強化の姿勢を明確にした。さらに競合メーカー幹部を驚かせたのが全固体電池の開発計画だ。全固体電池は現行のリチウムイオン電池の2倍以上の能力で、フル充電までの時間も数分に短縮できる。しかし量産車での実用化は困難とされてきた。

トヨタは富士山の麓にある東富士研究所(静岡県裾野市)などで研究を続け、すでに電池の試作品を完成させたという。EVの商品化では日産自動車やテスラが先行し、商品のないトヨタは出遅れているとの指摘も多い。だがルロワ氏は「HV(ハイブリッド車)の電動化技術の知見があり、全固体電池の準備もある」と強調、「航続距離を飛躍的に改善するゲームチェンジャーとなりうる」と話した。

トヨタの電池開発の原点は創始者、佐吉氏の時代に遡る。自動織機で成功した佐吉氏は1925年に小型・大容量の蓄電池の開発を公募した。懸賞金は100万円で、現在の数十億円に相当する破格の金額だった。飛行機の動力源になるほどの性能を想定したため実現はしなかったが、トヨタはその思いを温め続けてきた。39年には蓄電池研究所を設立しEV用電池の研究も進めた。全固体電池を実用化できれば佐吉氏の夢に一歩近づく。

だが、実現へのハードルは高い。トヨタは世界170カ国・地域で年間1千万台を販売する。品質の安定や電池寿命の確保のほか「リーズナブルなコスト」(トヨタ)も課題になる。村田製作所日立造船も開発を進めており、実用化に向けた競争もすでに起きている。20年までのEV参入を表明した英ダイソンも開発を計画する。

トヨタは世界各国の環境規制や消費者ニーズに対応するため、今後もFCV(燃料電池車)を含めた全方位で環境車の開発を進める方針。研究開発費の負担増に備え、自前主義から提携先の拡大にカジを切り、効率的な開発を模索している。

全固体電池の方針発表を受け、SUBARUの吉永泰之社長は「非常に期待も高く注目している」と語り、マツダの丸本明副社長は「アライアンスを生かせるものかを含め検討したい」と話した。次世代電池の実現は提携先の求心力も左右する。(工藤正晃)

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