2019年2月21日(木)

高齢者の外出見守りタグ エーザイとVBが開発
薬だけじゃない 認知症薬から課題発掘

2017/10/26 6:30
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エーザイは9月に高齢者の外出支援ツール「Me―MAMORIO(ミマモリオ)」を発売した。認知症の患者など外出時に行方不明となる人の増加は社会的な問題となっており、製薬企業として薬だけでない貢献の形を模索した。新進気鋭のベンチャー企業とタッグを組み、高齢者が日々使える小型端末を送り出した。

重さは7グラムで衣服や帽子に縫い付けられる小型の端末にまとめた

エーザイは認知症を軸とした高齢者の見守りに注力してきた。認知症では100超の医師会・自治体と協定を結ぶ。田芳郎上席執行役員は「認知症薬を扱う中で、当事者の要望を蓄積してきた」と話す。

ソリューション企画推進部の高井博文ディレクターは「課題があるならエーザイとしてお役に立てないかと考え、外出行動の問題があがった」とふり返る。家族や高齢者が安心して過ごすため、居場所の確認は大きな課題だった。2016年4月から解決策の具体化へ動き出す。

実現へ大きな一助となったのが、ベンチャー企業との交流イベント。そこでのマモリオ社(東京・千代田)の増木大己社長との出会いだった。高井氏とともに開発に携わった森本正治ディレクターは「モノで解決するのでなく、解決する仕組みを追求する企業の思想に共感した」と語る。

マモリオ社は落とし物を捜す掲示板サービスから始まり、15年から近距離無線通信「ブルートゥース」を搭載した紛失予防タグ「MAMORIO(マモリオ)」の販売を始めた。専用ソフトを入れたスマホがアンテナ代わりとなり、持ち主に落とし物の場所を教えてくれる。

両社の出会いから契約までとんとん拍子に話は進み、16年8月には共同開発で合意。マモリオ社は「高齢者の外出という使い道は考えていなかった」(森本氏)というが、両社が「共助・互助という目指す方向性が一致していた」(同)ことで一気に動き出した。自治体ごとに地域の人が集まり行う声かけ訓練の場で使ってもらい、事業化の手応えを測った。「マモリオ」を使い、16年度だけで11カ所で、1回30~50人に感想を聞いた。

マモリオは受信アプリを入れたスマホが無ければ位置情報を集められない。ところが、欠点が「思わぬ効果」(高井氏)を生んだ。受信アプリを地域の人に入れてもらうための呼びかけ活動から、訓練に参加していない層が当日多く参加してくれた。また、多くの自治体が情報を伝えるための伝達ルートの確立に動き出した。機器そのものも「すれ違い情報がある事で声かけがしやすくなった」と好評だった。

製品化にあたり、高齢者の利用を見据えた改良も施した。スマホ端末とのすれ違い時に情報を渡す感度を上げ、電池も確実に1年以上は持つ物に入れ替えた。重さも7グラムに抑え、デザイン事務所に頼み、親しみやすいボタン形状を採用。マモリオ社が盗難保険を装置とセットで提供しているのをヒントに、東京海上グループの協力を得て、医療相談などを無料で行えるサービスも付けた。

こだわったのが「孫や子どもがプレゼントできる価格」(森本氏)だ。月額制サービスで初期コストを抑える道もあったが、「手が出にくい。買い切りにこだわった」(同)。保険も料金に盛り込み、余分な出費が生まれぬよう心がけた。マモリオのアプリと連携させ、同アプリを入れたスマホも見守りに一役買えるようにした。

マモリオ社の通販サイトに加え、エーザイの提携自治体への卸売りも始める。高齢者の外出手助けで、企業理念「ヒューマン・ヘルス・ケア」を体現する製品に育てる。

■見守り関連市場、2025年に227億円

調査会社のシード・プランニング(東京・文京)は高齢者見守り・緊急通報サービスの市場は14年に142億円で、25年は227億円に拡大すると予想。一人暮らしの親をもつ子世代300人に聞くと、23%が「利用中・利用」の意向があった。

綜合警備保障(ALSOK)は6月に玄関先にセンサー付きの専用装置を置き、徘徊(はいかい)時に警備員が駆け付けるサービスを開始。底に発信器を付けた靴はアキレスなどが開発、セコムも位置情報と通報による駆け付けサービスが付いた専用端末を販売する。

行方不明となる高齢者は増加の一途をたどる。特に認知症が原因の不明者は17年に前年比26%増の約1万5000人と深刻だ。外出そのものは健康に深く寄与する。見守り網の構築は社会的な課題だ。

(企業報道部 山本夏樹)

[日経産業新聞 2017年10月26日付]

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