2018年7月21日(土)

場所や時間にとらわれない働き方で創造性高めよう
鶴光太郎・慶応義塾大学大学院教授の基調講演

2017/10/30 0:30
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 3月に政府がまとめた働き方改革実行計画は、罰則付き時間外労働時間の上限規制を導入した点で画期的だが、生産性を高めるという視点が入っていない。

 現在の働き方改革の議論は非常に画一的だ。多様な働き方を実現することが働き方改革の本質であり、企業の経営者、従業員が息の長い改革を真剣に考え、取り組んでいかなければ、双方にとってウィン・ウィンの改革にはならないし、かつ企業のパフォーマンスも上がっていかないだろう。

 生産性を高めるには2つの側面がある。時間当たり生産性を高めるという側面と、創造性を発揮するという側面だ。経済学的に考えると、生産性向上の手段は第1に資本装備の増大。1つの機械で生産していたものを2つにすれば、より多く生産できる。それからイノベーション。機械の性能が格段によくなり、効率が上がるということだ。

 だが、こうしたことは言わずもがなの話であり、もう少し違った観点が必要だ。一つは徹底的に情報技術(IT)を活用して時間当たりの生産性を高めること。ITとかHR(ヒューマン・リソース)テクノロジーといわれる技術を活用することで、従業員がどれぐらい努力したかとか、どれぐらい労働時間を費やしたかとかが見やすくなってきた。

 一番簡単な例は、パソコンのオンとオフ。最近はウエアラブルデバイス(身体に着けることができる小型の機器・センサー)やWEBカメラなどよって、業務への集中度など従業員の様々なデータを集められる。

 アウトプットに関しても、書類やメールがデジタル化され、クラウドなどで集中管理されると、どこからでもアクセスでき、従業員が共有できる。ホワイトカラーの場合、チームで仕事をするとフリーライダー(ただ乗りする人)が出るという問題がある。これもICTの活用で少しずつ貢献度が可視化されてきた。

 こうした情報を利用すると、業務の棚卸しとか、無駄な業務内容・プロセスの特定・見直しも容易になる。仕事の標準化を通じて、特定の人しかできないという状況を変えていくということも可能だ。大きな転換点を迎えていると思う。

 生産性向上のもう一つの視点は、創造性を高めるような、イノベーションにつながる新たなアイデアが発現するような働き方が何かということだ。一つ考えられるのは、場所・時間にとらわれない働き方。テレワークとか、高度プロフェッショナル制度のような労働時間適用除外制度、もう賃金を労働時間と結びつけるのはやめるといった考え方がある。

 (仕事と休息の)メリハリも必要だ。ライフサイクルで考えると、若い時代、スキルを身につけていく、修羅場を経験し、鍛えられていくプロセスの中では、ある種の長時間労働は仕方がない。それが恒常化するのが問題で、重要なのが健康確保とか休暇であり、労働解放時間の規制をどうするのかということになる。

 勤務間インターバル制度の導入もそうだろうし、割増賃金というような金銭補償ではなくて、残業時間をためて休日に代替するといった時間外労働の補償制度の活用もある。これは労働時間貯蓄制度というが、創造的な仕事をやる人のリフレッシュにつながるのではないかなと思う。

 なぜ、テレワークをやるのかというと、やはり生産性を高めるためだ。

 労働政策研究・研修機構が従業員を対象に実施したアンケート調査によると、半分程度が生産性・効率性が上がる、仕事がより効率的にできると答えている。テレワークはむしろ従業員の創造性、生産性を高める手段として明確に位置づけるべきだと思う。

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