ファッションテック)ヴァシリー、AIが着こなしを解析、似たアイテムを提携サイトから探して表示
写真共有アプリ「インスタグラム」を自らの着こなしの参考にする若い女性らが増えている。しかし、写っている衣料品やアクセサリーをどこで買えばいいのかわからず、ひたすらグーグルで検索するという人も少なくない。IT(情報技術)ベンチャーのヴァシリー(東京・品川)は、そんな女性たちの悩みを解消するサービスを提供する。

「インスタの普及で画像が消費を喚起するケースが格段に増えた」。ヴァシリーの金山裕樹社長は強調する。同社はモデルなど人気のある60人のインスタグラマーと契約。彼女たちが投稿した着こなし画像に登場する衣料品などに似た商品を手軽に探せるサービス「SNAP by IQON(スナップ バイ アイコン)」を提供する。
インスタグラマーが投稿した画像は人工知能(AI)が解析。提携する約200の通販サイトが扱う100万点の中から画像に掲載されているファッションアイテムと似たものを探し出す。利用者はずらりと並んだ商品からお気に入りを選ぶだけで簡単に購入できる仕組みだ。
これまではインスタなどで自分好みの着こなし画像を見つけたとしても、似た商品を店頭で探すか、ひたすらネットで検索することが多かった。しかし、ファッションアイテムは家電製品や食品などと違い、色やサイズなどスペックだけでは好みの商品を検索するのは難しい。
例えばモデルが着ている紺のワンピースが欲しくても、「ワンピース 紺」と検索すると、膨大な量の商品が表示されるだけだ。サイズやシルエット、素材感など微妙なニュアンスは言葉では表現しきれない。膨大に表示された画像に目を通して、イメージに近い商品を探すしかないのが実情だった。
スナップはAIが画像をもとに近い商品を見つけてくれるため、利用者は言葉を使わずに視覚のアプローチだけで商品を探せる。画像解析にはディープラーニング(深層学習)の技術を活用。ニットやバッグなど膨大な商品の特徴を覚え込ませている。
スナップは大々的な宣伝はしていないが、「口コミで認知度が広がり、利用者数は右肩上がり」。ヴァシリーはスナップを経由して商品が購入された場合、通販サイトから手数料を受け取る。
ヴァシリーは2008年の設立。IT技術を生かしたファッション関連ベンチャーとして注目されてきた。今年10月には衣料品通販サイト「ゾゾタウン」を運営するスタートトゥデイがヴァシリーの完全子会社化を発表。今後はゾゾタウンのサイトにもヴァシリーが持つAIと画像解析の技術が活用されるとみられる。
衣料品のネット通販ではマガシーク(東京・千代田)も、ビッグデータ解析のサイジニアが持つ画像解析の技術を採用。サイト上でユーザーが見ている商品に似た商品を、お薦めとして表示する。
ファッションは消費者の感性や気持ちをいかにつかむかが重要だ。言葉にしづらい需要をつかむ手段として、AIによる画像解析技術を生かしたサービスが一段と広がりそうだ。
(鈴木慶太)