2017年11月22日(水)

異例の提案続出、NAFTA崩壊も視野に

The Economist
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2017/10/25 6:30
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The Economist

 「チャロ」と呼ばれるメキシコ・カウボーイのファッションを今風にデザインしたシャツを生産しているメキシコ人のロベルト・サンタナ・フローレス氏には今、悩みがある。以前はシャツを米国に輸出すると37.5%もの関税が課されたが、メキシコと米国、カナダの3カ国が北米自由貿易協定(NAFTA)を結んで以来、課税なしで輸出してきた。だが工場を拡張し、米国の顧客層をさらに増やすという彼の夢は危機にある。毎日、新聞にくまなく目を通し、NAFTA再交渉に関するニュースを読むが、交渉は難航しているようで、一部の新聞は同協定自体が崩壊するかもしれないと指摘している。3カ国間の年間貿易額は1兆ドル(約113兆円)を超えており、不安を感じている人は彼以外にも大勢いる。

 10月17日、NAFTA再交渉の第4回会合を終えた3カ国の代表者が開いた会見を見る限り、交渉が決裂しそうな様子はない。米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表は、NAFTAを破棄するなどという議論は出なかったと語り、再交渉を来年1~3月期まで延ばすと発表した。そして、たとえ合意に至らなかったとしても、一般に懸念されているほど深刻な影響はないと指摘した。一方、カナダのフリーランド外相は「冷静なカナダ人」らしく、「(NAFTA崩壊という)最悪の結末」も覚悟し、備えていると発言した。

■受け入れがたい「サンセット条項」

 一部の内容改正についての交渉は順調に進んでいる。17日に発表された共同声明によると、競争政策や関税、電子商取引、規制慣行などについては進展があったという。だが、他の部分で交渉がうまくいかないことは当初から予想されていた。ライトハイザー氏は、環太平洋経済連携協定(TPP)で合意していた一部の内容(情報通信や腐敗防止、電子商取引など)をメキシコとカナダが拒否したことに失望感を示した。12カ国が参加するTPPからは、トランプ米大統領が1月に米国の離脱を表明した。ライトハイザー氏は、メキシコとカナダにとって、譲歩すれば日本市場にもっと入れるTPPとNAFTAが違うことを知っている。フリーランド外相は、米国政府による調達で、カナダとメキシコの参入拡大を渋っていることが信じがたい様子だ。このままでは両国よりバーレーンの企業の方が、参入機会が大きくなるという。

米国のライトハイザーUSTR代表(中央)は、第4回会合後の会見でNAFTAが崩壊しても大きな影響はないと語った=AP

米国のライトハイザーUSTR代表(中央)は、第4回会合後の会見でNAFTAが崩壊しても大きな影響はないと語った=AP

 カナダとメキシコが受け入れられないとする米側の提案は他にもある。例えば、季節性の高い米国産農作物を保護するため、アンチダンピング(不当廉売)関税措置を導入しやすくするという提案は怒りを招いている。カナダが設けている乳製品や鶏肉、卵の輸入制限を段階的に廃止せよとの要求も、カナダで激しい政治的反発を招くだろう。カナダで、組織力の強い酪農業界のロビー団体を敵に回すようなまねをする主要政党はない。さらに米国は、アンチダンピング税と相殺関税を巡る紛争解決のためのパネル(紛争処理小委員会)審査手続き(第19章手続き)の廃止も求めている。だが、カナダはまさにこの件で1987年にNAFTAの交渉から離脱したことがある。

 以上の点はどれも厳しい交渉になっているが、通常の貿易交渉の想定内と言える。より問題は、米国が最後の第4回会合で要求してきた内容だ。フリーランド氏はそれらを「異例の提案だ」として、彼女のチームの仕事を「より困難にしている」と語った。米経済団体の全米商工会議所のジョン・マーフィー副会頭は、もっと歯に衣を着せず「米国の提案はあまりに極端で、交渉の余地は全くない」と痛烈に批判している。

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