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野外劇の雄 昭和描く 劇団「犯友」、舞台自ら設営(もっと関西)
カルチャー

2017/10/20 17:00
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大阪を拠点に活動している劇団犯罪友の会(犯友)が24日まで、難波宮跡公園(大阪市中央区)の特設劇場で「ことの葉こよみ」を上演中だ。1970年代から大阪では野外劇が盛んに行われてきたが、最近は上演劇団が減少してきた。維新派と並び、関西の野外劇をけん引してきた古参劇団も今公演を最後とする方針。劇団員らが熱のこもった芝居を繰り広げている。

「ことの葉こよみ」の野外公演のリハーサルの様子(大阪市中央区)

「ことの葉こよみ」の野外公演のリハーサルの様子(大阪市中央区)

普段は何もない原っぱの真ん中に、丸太約1500本を組んだ劇場がそびえ立つ。入り口側の壁面には「劇団犯罪友の会」の名を大きく筆書きした幕が下がり、独特の存在感を醸し出している。劇団員は9月末から会場入りし、約3週間かけて劇場を立ち上げた。テントで寝泊まりしながら昼間は舞台の設営、夜は稽古という日々は過酷だが、こうした生活から生まれる一体感もあるのだろう。

物騒な劇団名ではあるが、犯友の芝居はいたってオーソドックスだ。これまで、江戸時代から明治、大正、昭和にかけての、日本の近現代史を独自の視点で切り取った作品を上演し続けている。今作は1960年代後半、かつて造船業で栄えた田舎町が舞台だ。

■2階建てセット

東京五輪と大阪万博の間の、高度成長で日本が大きく変化した時期。父から引き継いだすし店を営む若者と、近隣の料亭の仲居の恋を縦糸に、クーデター未遂事件の関係者やそれを追う怪しげな雑誌記者の動きを織り交ぜ、戦争の影が残る当時の世相を描き出す。

上海からの引き揚げ者や空襲で家族を失った人など、戦争の後遺症を抱えながら懸命に生きる市井の人々が登場する。主宰の武田一度は「第2次世界大戦中に日本軍の中枢にいた人たちがまだ社会の現役として活動し、戦争の影響が社会のあちこちに残っていた時代。北朝鮮のミサイル発射など、日本をとりまく情勢が不安になる今、当時の日本を再考する意味がある」と狙いを語る。

一歩劇場に足を踏み入れると、昭和を感じさせるレトロな小道具の効果もあって、見たことのない昭和の空気が流れてくるよう。舞台には2階建てのセットが組まれ、1階がすし店、2階が料亭の客間になっている。照明を切り替えることでスムーズに場面転換ができる仕掛けだ。武田は「小劇場ではできないような高さのあるセットも野外なら自由に設営できる。縦の演出ができるのは野外ならではの醍醐味」と話す。

野外劇を始めたのはどちらかと言えば消極的な理由からだった。活動を始めた76年当時、大阪には小劇場がほとんどなく、発表の場は公共ホールが主だった。だが、劇団名から反社会的な活動をしているのではと誤解をうけ、公共ホールは貸してもらえない。ならば、と自分たちで舞台をつくりはじめたのだという。

初めての舞台は、武田の知人が運営する幼稚園のグラウンド。その後は天王寺野外音楽堂や京都大学の西部講堂などで公演を続けてきたが、80~90年代になると、会場探しが難しくなってきた。そこで、武田が中心となって関西で活動する野外劇の劇団が集まり、「関西野外演劇連絡協議会」を結成。99年からは、大阪市との共催の「大阪野外演劇フェスティバル」として、難波宮跡公園などで公演を続けてきた。

■今公演で最後

だが、犯友は今公演を限りに野外公演を打ち切る考えだ。武田が67歳と高齢になったうえ、劇団事務所の移転で資材の保管場所がなくなることなどが主な理由だ。1公演で数百万円という費用がかかり、公演をするごとに大幅な赤字が発生するという事情もある。「野外劇をすると最近の若い劇団員は辞めてしまう」と武田は嘆く。今後は屋内での公演に専念し、若手劇団員の育成に注力するという。

関西の野外演劇の代表格だった維新派は、昨年主宰の松本雄吉が他界したため、今秋の台湾公演を最後に解散する。特設テントでの公演を続けてきた浪花(なにわ)グランドロマンも2015年でテント公演の幕を下ろした。夜空の下、時には雨風にさらされながら見る芝居は、舞台と客席に不思議な一体感が生まれる。その灯が消える前に、一度体験してみてはいかがだろうか。

(大阪・文化担当 小国由美子)

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