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爆買いクラブ抑えた浦和 10年ぶりACL決勝進出

サッカージャーナリスト 大住良之

サッカーのアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)の東地区準決勝第2戦、浦和―上海上港(中国)戦が18日に行われ、浦和が1-0で勝利。第1戦と合わせたスコアを2-1とし、2007年以来10年ぶりに決勝にコマを進めた。決勝戦の相手はサウジアラビアのアルヒラル。11月18日にサウジアラビアの首都リヤドで第1戦、そして1週間後の25日に埼玉スタジアムで第2戦が行われる。

完全に違う3つのチーム

上海上港を破って決勝進出を決め、喜ぶGK西川(左から2人目)ら=共同

今季の浦和には、完全に違う3つのチームがある。選手はあまり変わらない。しかしサッカーそのものはまったく違う。

シーズン序盤は6シーズン目のミハイロ・ペトロビッチ監督が率い、圧倒的な強さをみせてJリーグで首位を走り、ACLでも破壊的な得点力を武器に勝利を重ねた。ACLの1次リーグ6試合で4勝2敗。得点18(1試合平均3点)は、出場32クラブ中最多だった。

そして5月下旬のACL決勝トーナメント1回戦では韓国の済州を相手にアウェーで0-2と敗れたが、ホームでは延長まで戦って3-0とし、クラブとしては9年ぶりに準々決勝進出を果たした。

だがこの2試合にあまりに力を注いでしまった影響か、6月に入ると極端にパフォーマンスが落ちた。これが「2つめの浦和」である。Jリーグでも1試合平均3点近く取っていた攻撃力が湿り始め、守備が崩壊、ACLが休みだった6月から7月にかけてのJリーグでの8試合で2勝6敗、得点12、失点21と急ブレーキがかかって中位に後退する。そして札幌に0-2で完敗した7月29日の試合後にペトロビッチ監督が解任され、堀孝史コーチが監督に昇格する。以後が「3つめの浦和」だ。

堀監督はペトロビッチ監督時代の定番だったシステムを3-4-2-1から4-1-4-1に変更して守備の強化を目指したが、Jリーグではなかなか結果が出ていない。しかし8月に準々決勝から再開されたACLでは、勝負強さをみせるようになった。

同じ日本の川崎と対戦した準々決勝ではアウェーの第1戦を1-3で落としたが、ホームの第2戦では川崎に先制されて絶体絶命のピンチに立ちながら川崎DF車屋の退場にも助けられて4-1と大逆転勝利。決勝トーナメント1回戦に次ぐホームでの大逆転劇で準決勝に進んだ。

その準決勝。9月27日の上海での第1戦を柏木のゴールで1-1の引き分けに持ち込んだ浦和は、0-0でも決勝進出という有利な状況でホームに戻り、10月18日の第2戦を迎えたのである。

上海上港はFWにかつて広州恒大でACL2回優勝の経験を持つ元ブラジル代表FWエウケソン、同じく元ブラジル代表FWフッキ、さらに昨年約90億円という巨額でイングランドのチェルシーから移籍したブラジル代表MFオスカルと、強烈な攻撃陣を持っている。監督は元チェルシーのアンドレ・ビラスボアス氏。いわゆる「爆買いクラブ」である。特に第1戦で先制のミドルシュートを決めたフッキの馬力とシュート力を抑えるのは至難の業と思われた。

この試合の浦和は守備がすばらしかった。右から遠藤、阿部、マウリシオ、槙野と並ぶ4バック。センターバックタイプが4人並んでいる形だが、フッキやエウケソンに粘り強くついて足を出し、突破を許さない。オスカルがボランチのラインまで引いて球出しを図るが、浦和の守備が緩みをみせることはなかった。

前線ではFW興梠、MF武藤、MFラファエルシルバが相手DFにプレスをかけ続け、中盤では柏木と長沢がかき回し、青木が忠実にカバーした。

フッキ(中央)の突破を阻む阿部(左)と青木=共同

浦和は11分に柏木の左CKをラファエルシルバが頭で決めて先制し優位に立つと、後半は守備のブロックを保ちつつ何度も得点機をつくり出した。右CKから槙野のヘディングはバーをたたき、ドリブルで攻め上がった阿部のクロスを受けた興梠のヘディングは上海上港GKのファインセーブに防がれた。

ボール支配されても「完勝」

上海上港はフッキのミドルシュートを浦和GK西川が防いだところに詰めてきたエウケソンが至近距離から狙ったものを西川が再度のセーブで防いだ以外、ペナルティーエリア内にほとんど侵入できなかった。ボール支配では圧倒的に上海上港が上回ったが、浦和の「完勝」といっていい試合だった。

今年のACLで浦和は上海上港と4試合戦い、2勝1分け1敗。昨年は広州恒大に1勝1分け。この「爆買いクラブの草分け」のようなクラブ(13年と15年のACL王者)を蹴落としている。そうして積み重ねてきた経験が、今年の準決勝2試合の結果として表れたように感じる。

今年、日本からは浦和と川崎のほか、鹿島とG大阪の計4クラブがACLに出場、1次リーグ最下位に終わったG大阪を除く3クラブが首位で突破し、鹿島が決勝トーナメント1回戦、川崎がベスト8まで進み、浦和は決勝戦進出を果たした。

ACLの大会形式変更により日本から4クラブが出場するようになったのが09年。だが、07年の浦和、08年のG大阪と連続優勝を飾ってきた日本だったが、4クラブ出場になってからは優勝どころか、決勝進出チームさえなかった。

最初の09年には全4クラブが1次リーグを突破し、名古屋が準決勝に進んだが、それ以降は1次リーグで敗退するクラブも少なくなかった。「東地区」だけで行われる1次リーグでは当然、日本と同じように4クラブが出場する韓国や中国、あるいはオーストラリアのクラブと争わなければならない。以前から勝負強い韓国に加え、近年は広州恒大を筆頭とする中国勢が急速に力をつけ、各クラブに数人いる「国際クラス」のスターたちの力に負けるという形が多かった。

だが、今年のACLでは日本勢と中国勢との対戦は10戦して3勝3分け4敗。江蘇にホーム0-1、アウェー0-3と連敗したG大阪を除くと、鹿島が決勝トーナメント1回戦で広州恒大に1勝1敗、浦和が上海上港に2勝1分け1敗、川崎が広州恒大に2分けと、「負けない」形になってきた。それは、中国の金満クラブの数人のブラジル代表級選手の「個」の力に屈していた日本が、ようやく乗り越えつつあることを示している。

アルヒラルの力を侮れず

浦和の決勝の相手、アルヒラルはACLが始まる前のアジアクラブ選手権で2回の優勝(1991年、00年)があるが、ACLでは14年に決勝に進出したことがあるだけ。だが準決勝でイランのペルセポリスを2戦合計6-2で下した力は侮れない。

浦和のサポーターは観光ビザのないサウジに何人行けるのだろうか=共同

準々決勝、日本人DF塩谷司がいるアラブ首長国連邦(UAE)のアルアインにホームで3-0と完勝した試合で全得点を挙げたのが、ブラジル人MFのカルロスエドゥアルド。背番号3をつけているが攻撃的な選手で、ポルトガルのポルトやフランスのニースでプレーした経験を持つ。フリーキックも強烈だ。しかしブラジル代表クラスというわけではない。より気をつけなければならないのは、準決勝の2試合で5得点を記録したシリア代表FWオマル・ハルビンだろう。184センチの長身で馬力があり、正確なシュート力の持ち主だ。

監督はJリーグ草創期に横浜マリノスで活躍したアルゼンチン人のラモン・ディアス氏。息子がアシスタントコーチを務め、テクニカルスタッフはアルゼンチン人で占められている。

浦和といえば、どこへでも大人数で押しかけるサポーターが有名だが、リヤドにはほとんど行くことができないかもしれない。サウジアラビアには観光ビザがなく、サポーターは取得に9万円近くする商用ビザを取るしかない。9月のワールドカップ予選を応援にいったファンは長い交渉の末この額をのむことにした人々だったが、浦和のサポーターは何人行けるのだろうか。

この第1戦を何とかよい形で乗り切り、第2戦では真っ赤に染まった埼玉スタジアムのサポーターの力をバックに10年ぶりの優勝を飾ってほしいと思う。

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