2018年6月21日(木)

岐阜 歴史や街並み生かして地域おこし
(岐阜経済特集)

2017/10/19 4:00
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 岐阜県には各地に古い町並みが残る。高山市の中心部や、中津川市にある旧中山道の宿場町「馬籠宿」は全国的に知られた観光地だ。美濃市の「うだつの上がる町並み」にも注目が集まる。こうした中、県内で企業が古い建物を営業に活用する動きが広がってきた。

古い建物活用、景観保ち新店次々

 郊外店を中心にスポーツ用品を販売してきたヒマラヤが、岐阜市にアウトドア衣料の新業態店を開業した。築100年を超える古い商家を賃借し改装した。岐阜城がそびえる金華山のふもとの景観保護地域で、空き家となっていた紙問屋だった建物を改装した。

古民家を改装したヒマラヤの店舗(岐阜市)

古民家を改装したヒマラヤの店舗(岐阜市)

 広さは約100平方メートル。床の間を陳列スペースに、納戸は試着室にするなど、建物をそのまま生かしている。奥の蔵は、地元製の衣料などを扱う催事などに使っている。

 ハイセンスなアウトドア用シャツや上着などを扱い、若者から高齢者まで呼び込む。年間1億~2億円ほどの売り上げを目指している。金華山にはハイキング客も多く訪れ、来店が見込めると判断した。今後は全国の大都市や観光地に「クラホリック」の店舗を展開する計画だ。

 十六銀行も古い町並みが残る岐阜市川原町地区に古民家を改装したATMコーナーを開設した。長良川のウ飼い観覧船乗り場や旅館なども近く、観光客も多い場所だ。ただ、これまでは金融機関のATMはなかった。

 町家造りの木造家屋を約900万円かけて改装し、周囲の町並みになじむ外観にした。近くには1897年(明治30年)に出店した同行初の支店、旧「富茂登(ふもと)出張所」の建物も現存しており、多店化の原点といえる場所への復帰だ。

 リフォームや解体業を手掛ける美建田辺(大垣市)も、築110年の古民家を取得し、本社事務所としている。2階建てで延べ床面積千平方メートル強。約1300万円かけて、はりや柱を残して改装した。古民家を現代的な住宅に改装したい顧客へのモデルハウス的な位置付けとなっている。

関ケ原町は「古戦場」、養老町は「改元1300年」前面に

 岐阜県は歴史に彩られた地。これを生かした地域おこしが各地で進む。

 古田肇知事と関ケ原町の西脇康世町長は8月、ベルギー中部のワーテルローを訪問した。同所は英軍などが1815年にフランスのナポレオン軍を破った古戦場だ。1600年に徳川家康ら東軍と石田三成ら西軍が戦った関ケ原と「姉妹古戦場」協定を結んだ。

ベルギーのワーテルローで記念撮影する岐阜県と現地の関係者(8月31日)=岐阜県提供

ベルギーのワーテルローで記念撮影する岐阜県と現地の関係者(8月31日)=岐阜県提供

 関ケ原町は2016年、ワーテルローと米南北戦争(1861~65年)の激戦地、ゲティズバーグの関係者を招き「世界古戦場サミット」を開くなど、古戦場にちなんだ交流を進めている。関ケ原の合戦から420年となる2020年に向け、さらなる観光客誘致に取り組む考えだ。

 今年は織田信長が稲葉山城に入り、この地を岐阜と命名してから450年の節目。岐阜市などで構成する「岐阜市信長公450プロジェクト実行委員会」は、同市中心部の図書館複合施設、みんなの森ぎふメディアコスモスで「体感!戦国城下町・岐阜 信長公ギャラリー」を開いている。数多くの関連事業の目玉で、12月17日まで、入場無料で信長に関連する映像などを見られる。

 養老町では「養老改元1300年祭」として、さまざまなイベントが催されている。奈良時代の717年(霊亀3年)、養老の泉を訪れた元正天皇は、若返りの効能があるとして、元号を霊亀から養老に改元したと伝えられる。11月3日には元正天皇行幸の行列を再現する予定だ。

 このほか、石川県にまたがる白山も今年開山1300年。岐阜県側でもさまざまな記念行事が行われており、郡上市の白山文化博物館では11月22日から来年2月19日まで関連の特別展を開く。

ものづくり中小企業が新風

 ものづくりが盛んな岐阜県。総務省の調査によると、2014年に県内の総事業所数に占める製造業の割合は14.4%で全国1位だ。その多くを占める中小企業には製品開発や、販路の開拓で注目される例もある。

 羽島市の機器開発ベンチャー、アイ・ティー・ケー。本社に置かれたロボットハンドが、岩田真太郎社長と同じ動きをする。IHIの傘下でロケット開発を手掛けるIHIエアロスペース(東京・江東)と組んで開発し、宇宙船の船外作業への活用を目指す。

ロボットハンドを操作するアイ・ティー・ケーの岩田真太郎社長

ロボットハンドを操作するアイ・ティー・ケーの岩田真太郎社長

 アイ・ティー・ケーは電動義手などを開発しており、この技術がIHIエアロスペースの目に留まり、宇宙船用のロボットハンドを1年半かけて開発した。

 刃物の街として歴史を持つ関市では、新商品開発や消費者開拓にクラウドファンディング(CF)を活用する動きが広がっている。はさみ部品などを生産するツカダが開発した、栓抜きやドライバーなど6通りに使える携帯工具「キークエスト」は、大手CFサイトを通じて年1万2千個を出荷するヒットになった。同社はこれまで最終消費者向け製品を販売しておらず、ネットを通じて販路開拓に成功した。

 はさみ製造のニッケン刃物もCFサイトを通じ、坂本龍馬らの愛刀をモチーフにした「名刀ペーパーナイフ」の購入者を募ったところ、2~4月に約3300人から1600万円を集めた。

 安八町の浅野撚糸は、オーガニック綿に抗菌作用のある銀を使った糸を織り込んだタオルを開発した。量販店や直営サイトなどで販売する。かつて栄えた繊維産業が沈滞する中、独自の技術で復活へ踏み出している。

リニア「岐阜県駅」にらみ街づくり

 2027年に品川(東京)―名古屋間が開業予定のリニア中央新幹線では、中津川市に「岐阜県駅(仮称)」が整備される。同市は今年4月に駅周辺の都市計画を決めた。駅舎以外にも、駅前広場や道路を建設し、工業団地「中津川西部テクノパーク(仮称)」も整備する計画だ。全体で26ヘクタール開発し、企業を誘致する構想で、27年までに企業の操業を目指している。

 隣の恵那市もリニアを生かした街づくり構想をまとめている。岐阜県駅は同市寄りに設置される計画で、市境に近い丘陵地帯に工場用地や住宅地を整備する方針だ。

 観光面の取り組みも始まった。中津川市や恵那市など東濃地域を中心とする7市町は県とともに「ひがしみの歴史街道協議会」を結成。「ひがしみの観光パスポート事業」を18年2月末まで展開している。各市町の観光案内所や道の駅、観光施設といった43カ所でスタンプの台紙となる「パスポート」を配る。248施設で一定額の飲食や買い物などすると押印され、数に応じて抽選で地元の特産品などが贈られる。

 18年春からNHKが放送する連続テレビ小説「半分、青い。」は、昭和時代の高度成長期の終わりに、東濃地域で生まれた女性がヒロイン。ドラマを生かした地域おこしも進みそうだ。

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