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勝負師・池田勇太、負けられぬ試合で重圧に勝つ

編集委員 吉良幸雄

主役・池田勇太(31)の迷走に、19歳のアマチュア、金谷拓実(東北福祉大1年)の大健闘――。ゴルファー日本一を決める国内最高峰の第82回日本オープン選手権(12~15日、岐阜関CC東=7180ヤード、パー70)は、池田が"自作自演"のドタバタ劇の末に逃げ切り、2014年(千葉CC梅郷)に次ぐ大会制覇を果たした。本大会での複数回優勝は史上17人目。1973年のツアー制施行後、日本人選手としては最年少での達成となった。

優勝を決め、ガッツポーズする池田=共同

5打差の首位スタート。2位に2打差以上の首位で最終日を迎えたときは、これまで6戦全勝と逃げ切りはめっぽう得意な池田だから、悠々ゴールするだろうと思われた。ところがアマ金谷に1打差に迫られ、息も絶え絶えでホールアウト。記者会見場に現れると、激闘に疲れ切った表情で「あー、ここにいるのが恥ずかしい」と照れ笑いを浮かべた。

上がり3ホールに苦戦の伏線

よもやの苦戦の伏線は第3ラウンドの「上がり3ホール」にある。チップインイーグル直後の16番で3パットボギー、18番ではドライバーショットを右カート道に曲げ、ボギー。「上がり3ホールで台無し。こういう終わり方をしていると競ったときに勝てない」と吐き捨てた。悔しくて16、18番のシーンが2度も夢に現れたという。右に曲げた18番の残像が頭に焼き付いていたのか。最終ラウンドの1番のティーショットは左へ。斜面でキックしてフェアウエー真ん中に出たが、3番のドライバーショットがまたもや左へ飛び、OBゾーンに消えた。このホールで、ラフからチップインを決めた同組の金谷が4番では10メートルを沈め連続バーディー。その差は一気に1打に縮まり、優勝争いは風雲急を告げた。

金谷がピンそば2メートルにつけた6番(パー4)で、池田はグリーン手前ラフからチップイン。7番(パー5)ではラフからの第3打を1メートルに寄せ連続バーディーを奪うなど絶妙の小技で首位を譲らない。ティーインググラウンドが前に出された11番(297ヤード、パー4)では1オンに成功しバーディー。12番を3パットボギーとした金谷を3打引き離した。

ところが15番(パー5)で左を警戒しすぎて今度はティーショットを右OB。16番は左バンカーに入れ、連続ボギーをたたく。再び1打差に迫られて迎えた17番ではユーティリティーのティーショットを右ラフに打ち込み、第2打もラフにつかまった。一方の金谷はピン右3メートルのバーディーチャンス。27年第1回大会の赤星六郎以来、90年ぶりのアマチュア優勝も現実味を帯びてきた。

しかし絶体絶命ともいえるピンチで、業師はアプローチを1メートルにつける職人芸だ。終盤は金谷もさすがに優勝を意識、バーディーパットを外して首位に並ぶことができなかった。ティーショットを曲げ続けた池田が勝負根性を見せたのが18番(473ヤード、パー4)。グリーンはやや打ち上げで距離も長く、ラフに曲げるとパーをとりづらいが、ドライバーを振り切り見事フェアウエーを捉えた。「1打リード。3番ウッドでフェアウエーに打ちゃいいかもしれないけど、ドライバーしかない」。金谷は第1打、第2打ともラフにつかまり、パーセーブが精いっぱいの状況。ただパーオンに成功した池田もカップまでは15メートル以上残していた。「3パットの可能性も十分ある」。ハウスキャディーと慎重にラインを読み、10センチに寄せると天を仰ぎ、目を潤ませた。

優勝した池田(右)と接戦を演じたアマの金谷=共同

5打差の首位から、逆転負けは許されない。しかも相手はアマ。大会初制覇の後、この2年連続で2位に敗れている。日本オープンタイトルの重みをひしひしと感じ、のしかかるプレッシャーは相当だっただろう。「誰が戦おうとアマに負けちゃいけない」。アプローチを勝因に挙げながら「こんなに曲げ倒して申し訳ない。ダサいゴルフ」と苦笑した。海外での活躍を目指し、昨季から筋力トレーニングに取り組み始めた。その成果でドライビングディスタンスは昨季の平均282.81ヤード(ランク28位)から今季は同298.95ヤード(6位)に伸びている。池田にはちょっと珍しい1ラウンド2OBは、15ヤード以上の飛距離アップも影響しているかもしれない。

体調万全にしてタイトル狙う

ただ青息吐息でも勝ちきったのは勝負師ならではだ。刀の町、岐阜県関市から優勝記念品として日本刀を贈られ、銃刀法に基づき登録証にサイン。優勝賞金4000万円を懐に入れた31歳の荒武者は、賞金ランク3位に浮上した。トップに返り咲いた小平智とは768万円差。2年連続賞金王へ着々と歩を進めている。今回は、オフやシーズン中の筋力トレーニングの拠点である福岡のジムからトレーナーと鍼灸(しんきゅう)師を呼び、整体師と3人がかりで毎日1時間ケア。体調万全にして、3週間居続けた名古屋のホテルから、愛車のアメ車のハンドルを握ってコースに通った。狙って勝ち取ったタイトルともいえよう。世界ランクも前週の52位から37位に上げ、マスターズ出場圏内(50位)に突入した。残り7試合で1~2勝を、と意気込む。

金谷は12、16番の3パットボギー、17番でバーディーチャンスを逃したのが響き、90年ぶりのアマV、史上最年少での国内メジャー制覇の快挙を逸した。池田を土俵際に追い詰めたのは正確なティーショットが要因だ。最終日にフェアウエーを外したのは3回だけ。フェアウエーキープ率は最終日(78.57%)、4日間平均(75%)とも1位。最終日にグリーンを外したのは4回で、4日間のパーオン率(68.06%)は4位だった。

3位の小平にとって悔いが残る試合となった=共同

広島国際学院高2年で日本アマを史上最年少で制した15年大会は予選ラウンドを2位通過。5位から出た最終日は11位に沈んだが史上最年少でローアマを獲得した。ただ前回はビッグトーナメントの雰囲気を楽しみ「いい経験」になった。今回は優勝に手が届きかけただけに「2年前に比べて悔しい気持ちが強い」と話した。大学ゴルフ部のトレーニングでパワーアップ。飛距離は10ヤード以上伸びているという。決勝ラウンドでは得意のアプローチ、パットがさえ渡り65、68の好スコアをマーク。大学4年間で地力を養い、先輩の池田や松山英樹の背中を追う。

初日を6アンダー、64の首位タイと絶好のスタートを切った小平智(28)にとっては、悔いが残る試合となった。73とスコアを落とした第2ラウンド後に、ドライバーのヘッドがひび割れているのが判明。3日目から新ドライバーに持ち替えたが、思うようにボールコントロールできなかった。69で回った最終日のフェアウエーキープ率は35.71%。「フェアウエーに行かないことにはチャンスにつけられない。ドライバーが割れたのは痛い」とうめいた。3位で終えながら、アマ金谷の2位の賞金分、2200万円を手にし、宮里優作をかわし再びランク1位に立った。ただ、海外志向の強い小平のターゲットは、以前から賞金王ではなく、マスターズ出場権を得られる世界ランク50位以内。今季17戦して12度目のトップ10入りを果たし、同ランクは76位から63位に上がった。安定感は抜群で、オーガスタ行きの切符獲得へ着実に前進している。

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