クルド深まる孤立、キルクーク明け渡し 内部に亀裂
米「肩入れせず」 遠のく独立

2017/10/17 20:00
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【イスタンブール=佐野彰洋】イラク北部クルド自治政府の窮状が深まっている。イラク政府軍は係争地の油田地帯のキルクークを自治政府から奪還し、17日も近郊の油田など制圧地域を広げた。バルザニ自治政府議長とライバル関係にある政党傘下の兵士が戦闘を避けて撤退するなど内部の亀裂も明らかになった。クルド人勢力は「イスラム国」(IS)の掃討で大きな役割を果たしたが、国際社会からの支持は見当たらず、独立への道は一気に遠のいた。

ロイター通信によると、イラク軍は17日キルクーク周辺で国営石油会社操業の全油田の制圧を終えた。生産活動に支障は出ていない。軍や民兵組織はクルド側が実効支配していた北西部の町シンジャールなども新たに制圧した。独立に9割超が賛成した9月の住民投票からわずか3週間で状況は一変した。

「イラク政府は大きな代償を支払う」。自治政府の強硬な発言とは裏腹に、15~16日にかけてのイラク軍のキルクーク制圧作戦に対して、油田関連施設や基地などを守っていた自治政府の治安部隊ペシュメルガは戦闘を避けて撤退した。

イラク有数の油田地帯で、「クルド人国家」樹立の際の貴重な収入源と見込まれていたキルクークのあっけない喪失で露呈したのは自治政府内部の亀裂だ。

ペシュメルガは、バルザニ氏の与党クルド民主党(KDP)と、今月3日に死去したタラバニ前イラク大統領のクルド愛国同盟(PUK)の派閥に二分され、訓練や指揮命令系統も別々とされる。

キルクークに展開していたペシュメルガの多くはPUK派。KDPとPUKは過去に内戦に陥るなど根深い相互不信を抱える。バルザニ氏が主導した住民投票にPUKの一部は懐疑的で、地盤地域では投票棄権が相次いでいた。PUKに一定の影響力を持つイランが説得工作に動いたとの見方もある。

国際的な孤立も深まっている。住民投票の中止を求めていた米国のトランプ大統領は16日「どちらの味方もしない」と述べ中立姿勢を維持した。隣国のトルコやイランはクルドへの追加制裁を発動した。

今後はバルザニ氏の判断が焦点となる。傘下のペシュメルガが抵抗を開始すれば、IS掃討作戦に影響を及ぼすなど地域情勢を不安定にさせる恐れがある。ただ、装備で劣るクルド側の被害拡大は避けられない。

キルクークからトルコに延びるパイプラインはなお自治政府が管理している。安定した原油輸出を優先して自治政府とイラク政府の双方が折り合う可能性もある。

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