2019年9月18日(水)

音楽、元気与える力持つ 指揮者 佐渡裕さん(もっと関西)
私のかんさい

2017/10/17 17:00
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ウィーンのトーンキュンストラー管弦楽団で音楽監督を務める指揮者の佐渡裕さん(56)は京都市太秦で生まれ育った。声楽家の母親から音感教育を受け2歳からピアノを習い始めたが、路地で野球や鬼ごっこをするのも好きな少年だった。

 さど・ゆたか 1961年京都市生まれ。京都市立芸術大学卒。89年、ブザンソン国際指揮者コンクールでの優勝を機にプロデビューし欧州で活躍。02年から芸術監督を務める兵庫県立芸術文化センターで10月21日、ケルン放送交響楽団による「運命」「未完成」を指揮する。

さど・ゆたか 1961年京都市生まれ。京都市立芸術大学卒。89年、ブザンソン国際指揮者コンクールでの優勝を機にプロデビューし欧州で活躍。02年から芸術監督を務める兵庫県立芸術文化センターで10月21日、ケルン放送交響楽団による「運命」「未完成」を指揮する。

遊びたい盛りのやんちゃ坊主で、ピアノの先生にはずいぶん迷惑をかけた。でも音楽は好きで、小5から中3まで京都市少年合唱団に入団し仲間と声を響かせ合うすばらしさを学んだ。京都市交響楽団の指揮者がたまに指揮棒を振ってくれて、かっこいいと思ったのも音楽家を志したきっかけの一つだ。

小中は京都市立の学校に通い、高校も音楽科があった市立堀川高校(現京都堀川音楽高校)へ。大学は東京芸大へのあこがれもあったが大好きなフルートの先生がいた京都市立芸大に進んだ。音楽的なことは99%京都市で勉強し、京都市の税金で指揮者になったと思っている。

飛躍のチャンスを探っていた1987年、米タングルウッド音楽祭への参加が人生を変える。レナード・バーンスタイン、小澤征爾に師事したのをきっかけに欧州で認められるようになった。

演奏がうまくいけば次の仕事をもらえてギャラも上がるはっきりした世界だが、いつもホームランが打てるとは限らず空振り三振のときもある。それでも関西魂というのは確かにあって、いくらつらくても心のどこかで面白いことをやってやろうと燃えている。オーケストラの練習が停滞してきたときこそ笑わせたくなる。僕の語学力は「もっとゆっくり」など必要な情報を伝える程度でジョークを飛ばせるレベルにはない。それでも笑いで空気が和むことがあり、最高にうれしい。心を通わせるのは言葉の量じゃない。そうやって苦労して30年間やってきた。

95年の阪神大震災の発生時は京都にいたが、後ろ髪を引かれながらフランスの拠点に戻った。キャリアの浅い指揮者にできることは少ないとの判断だった。

神戸に毛布1枚、水1本でも持って行けなかったかとずっと心に引っかかっていた。兵庫県の貝原俊民知事(当時)から「音楽や舞台で震災前より優しく元気のある街にしてほしい」と県立芸術文化センター(西宮市)の芸術監督を依頼されたときは大きな使命だと思った。ただ二重ローンで苦しんでいる方も多く「劇場にお金をかけるならうちのローンを返してほしい」と言われたこともあり、オーケストラが本当に必要なのか悩んだ。

小学5年生の時、京都市少年合唱団に入団した

小学5年生の時、京都市少年合唱団に入団した

震災から10年の05年1月17日、被災した友人が初めて体験談を話してくれた。家族や友人を亡くした生々しい話だが、温かいお湯に触れる喜びや喫茶店のコーヒーを飲む喜びがあったと。音楽がなくても人は生きていけるが、音楽には元気を与えたり一緒に悲しんだりする力がある。長田区で被災した家内も背中を押してくれた。東日本大震災の時もそうだが、僕は自然災害で傷ついた人たちのもとへ兵庫県の代表として行っているつもりだ。

■1年の半分は海外で過ごすなか、関西に思いを巡らせることも多い。関西には昔ながらの人の流れが根強いと感じる。

京都は僕の子どものころに比べてずいぶん変わったが、寺や神社、街並みなど昔からあるものをしたたかに売りものに変えている。大阪の一番の財産は人のパワーだ。神戸には心地いい空気が流れている。この3都を含め、関西には人の流れの「芝目」があるのが面白い。例えば神戸の人は大阪に演奏会に行くけど、大阪の人は神戸にあまり行かないとか。芸術文化センターをつくるとき、西宮にお客さんは来ないよと相当な人に言われた。しかし「チケットが売り切れる劇場」になった。関西の芝目は重要だが、新しい人の流れを生み出していくことも大事なのではないか。

(聞き手は神戸支社 下前俊輔)

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