東レが目指す「パジャマクラブ」
ドイツに車材料開発の拠点、車体開発から参画

2017/10/17 15:00
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東レは17日、ドイツに自動車用材料に特化した開発拠点を新設すると発表した。電気自動車(EV)シフトや環境規制が強まる欧州では、電装化に適した材料や軽量で高強度の最先端素材の需要が高い。東レは素材を売るだけにとどまらず、部品や車体設計など自動車開発の初期段階から参画し、完成車メーカーにとって欠かせないパートナーに転身する。

東レが開設するオートモーティブセンター欧州(独ミュンヘン)

東レが開設するオートモーティブセンター欧州(独ミュンヘン)

「パジャマクラブ」。欧州において、素材や部品を含む自動車関連メーカーや大学、研究機関の内輪の集まりを指す俗語だ。「パジャマ姿で会話できるほど親密で閉じられた関係になっている」という意味がある。

このサークルに入らなければ、独BMWや独フォルクスワーゲン(VW)を頂点にする「欧州のサプライチェーン(供給網)に食い込むのが難しい」(東レ)。

東レは18年8月にBMWや独ボッシュなど自動車関連メーカーが集積する独ミュンヘン近郊に、「オートモーティブセンター欧州」(AMCEU)を開設する。自動車の材料に特化したユニークな研究開発拠点で、パジャマクラブの資格を得るための根城となる。

高機能樹脂、炭素繊維、フィルム――。東レは軽量化や電装化など自動車メーカーの要求に応えられる多種多様な素材を擁している。野球に例えれば「ストライクゾーン」が広いのだ。「炭素繊維で部品加工が難しければ樹脂で」「金属を軽量な積層フィルムで代替」といった対応はお手の物だ。

「我々は素材を開発するだけでない。自動車の初期設計の段階から入り込み、部品設計や加工方法など車メーカーへの提案を通して共同開発に参画していく」。東レの阿部晃一副社長はAMCEUの狙いを語る。

東レが自動車部品の設計・加工を担える存在であることをうかがわせているのが、名古屋市にあるA&Aセンターだ。足を踏み入れると部品の強度解析から大型の樹脂成型機、塗装ロボットまで物珍しい装置や機械があちこちに鎮座する。

ここから車メーカーと共同開発した炭素繊維や高機能樹脂の加工品が次々と産声をあげ、炭素繊維製のルーフパネルや燃料電池用部材などに採用されてきた。このA&Aセンターを欧州にも根付かせようというのだ。

EVシフトや自動運転など自動車産業は変貌の過渡期にあり、欧州はその先端を走る。現地では軽量・高強度、耐熱性、電波透過性などこれまで以上に独創的な部品性能が求められている。

その意味で東レは競争力ある品ぞろえで独BASFやソルベイ(ベルギー)など欧州化学大手に対抗できる力を備える。世界首位の炭素繊維、キズがついても自己修復するフィルム、耐熱温度がセ氏200度以上と圧倒的に高い世界首位の高機能樹脂ポリフェニレンサルファイド(PPS)――。これらはほんの一例にすぎない。

米エネルギー省によると、2030年に自動車材料に占める鉄鋼以外の比率は55%と足元から30ポイント程度増える見通し。東レにとっては千載一遇のチャンスが訪れている。 東レの自動車用材料の売上高は約2300億円と14年度から16年度まで年率10%で増加。世界の自動車生産台数の伸び率2%を大きく上回る。

新拠点をはじめ生産設備の新増設も進め20年までに売上高を3000億円まで高める計画を掲げる。「一筋縄ではいかない欧州」(東レ)で車メーカーが進める新機軸の車体開発を支援できるか。東レが素材ではなく自動車部品メーカーに脱皮できたとき、パジャマクラブへのパスポートを手にできるのかもしれない。

(上阪欣史)

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