セルスペクトと薬王堂、健康などビッグデータ提供

医療系ベンチャーのセルスペクト(盛岡市)とドラッグストアチェーンの薬王堂は健康とIT(情報技術)を組み合わせた事業に乗り出す。無料の健康チェックで得られる健康情報と消費行動情報を統合したビッグデータを分析し、自治体や企業に提供、健康寿命の延伸や医療費削減に活用してもらう。2018年春にデータの提供を始める。
16日、岩手県庁で両社が発表した。健康にITを活用する「ヘルステック」が注目されているが、ビッグデータ事業を展開するのは全国で初めてという。
セルスペクトは1滴の血液で糖質、脂質、肝機能などを10分程度で測定できる血液検体測定装置を開発している。18年春にはこの装置を薬王堂の盛岡市内の店舗に置き、無料の健康チェックを始める。駅ナカなどでの健康チェック事業を手がけるケアプロ(東京・中野)と連携し、測定には同社のノウハウを活用する。
利用者はアンケートで性別や年齢、食事の嗜好などを回答し、チェックを受ける。
得られた健康情報に薬王堂が持つ「ID-POS」と呼ばれる顧客属性付きのPOS(販売時点情報管理)データを統合する。このデータに個人情報は含まない。セルスペクトが開発するクラウド型の健康情報プラットフォームでデータを解析し、健康チェックの利用者や自治体、企業などにそれぞれの形式でデータを提供する。国内だけでなく、アジアなど海外展開も視野に入れる。企業へのデータ提供で収益を得る仕組みだ。
例えば、ある地域の30~40代の男性に血糖値の高い人が多いという分析データを自治体に提供すれば、自治体は有効な対策を打ち出しやすくなる。企業は消費者に有益な健康食品や健康器具などの商品開発につなげることができる。生命保険会社ではリスク管理の新商品に利用できる。
ドラッグストアなどの中には健康チェックサービスに取り組んでいる企業があるが、1回1000~3000円かかるほか、結果が出るまで1週間程度かかるため、利用が伸び悩んでいる。
無料の健康チェックにすることで、年1回の健康診断よりも頻繁に利用でき、多くのデータ収集が期待できる。健康診断を普段受けていない主婦やシニア層に気軽に受けてもらい、健康意識を高めてもらうことも狙う。
薬王堂は東北5県で展開する236店舗に順次装置を入れるほか、全国のドラッグストアや調剤薬局にも導入を呼び掛ける。西郷辰弘社長は同日の記者会見で「売り上げに直結する事業ではないが、少子高齢化社会で顧客の健康寿命を延ばすことは意味がある」と強調した。セルスペクトの岩渕拓也社長は「まずは国内100万件、海外5万件の健康情報を集めたい」と話した。
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