2018年6月24日(日)

米WD、HDD「データ膨脹」に活路

コラム(ビジネス)
2017/10/17 6:30
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 米ウエスタンデジタル(WD)はハードディスク駆動装置(HDD)の記憶容量を3倍にする技術を開発した。マイクロ波でデータを書き込む密度を高めた。パソコン市場の縮小などによってHDDの出荷台数は減少傾向にあるなか、インターネットサービスの拡大を背景にデータセンター向けは堅調。「データの膨張」を受け止める技術で生き残りを目指す。

11日に米サンノゼ市の本社で新技術を採用したHDDを動かした

11日に米サンノゼ市の本社で新技術を採用したHDDを動かした

 「ついにブレークスルーを成し遂げた。HDDはデータセンターで活躍し続けるだろう」。米サンノゼ市のWD本社で11日、マイク・コルダノ社長兼最高執行責任者(COO)はそう言って新技術「マイクロ波アシスト磁気記録(MAMR、ママー)」を紹介した。

 データを読み書きする磁気ヘッドにマイクロ波を出す部品を付けた。WDが現在、販売しているデータセンター向けHDDの記憶容量は1台あたり最大14テラ(テラは1兆)バイト。マイクロ波の作用によってより高い密度でデータを書き込めるようになり、記憶容量を増やせるという。

 コルダノ氏は「MAMRを使えば、2025年までに(1台あたり)40テラバイトのHDDを生産できるメドが立っている」と説明する。具体的な記憶容量は明かしていないものの、18年にサンプル出荷を始め、19年から量産する。

 MAMRの理論そのものはHDD業界でよく知られている。レーザーを組みこむ手法と比べ、コストを上げずに記録密度を高められる「現実解」とみられてきた。ただ、実際に試作品をつくり、量産計画まで打ちだしたのはWDが初めてだ。同社の技術者は「8~9年がかりで開発してきた」と話す。

 開発期間にHDDを取りまく環境は大きく変わった。パソコンの普及とともに急増したHDDの出荷台数は、10年の6億5000万台をピークに減っている。パソコン需要は記憶媒体としてフラッシュメモリーを搭載するスマートフォン(スマホ)に移行。HDDの出荷台数も16年に4億2000万台まで落ちこんでいる。

 東芝との係争のきっかけとなる米フラッシュメモリー大手のサンディスクを16年に買収したのも、HDD市場の縮小に対する危機感からだ。強い向かい風が吹くなかで、数少ないプラス材料が画像投稿や動画配信の拡大を受けて伸びているデータセンター向けビジネスだ。

 WDは20年になっても「データセンターの(記憶容量の)9割はHDDが担う」と予想する。16年に87億ドル(約9700億円)だったデータセンター向けHDDの市場規模は、20年に110億ドルまで拡大するとみる。

 ただし、データセンターに経営資源を重点配分する傾向は競合他社も同じ。「同じ容量なら10倍高い」というフラッシュメモリーの技術も進化を続けている。膨張するデータの収容先を巡る競争は、MAMRの登場でさらに激しくなりそうだ。

(シリコンバレー=佐藤浩実)

[日経産業新聞2017年10月17日付]

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