2019年5月24日(金)

「日の丸鉄道」発祥の地走る 日立製、英で実運転開始

2017/10/16 18:50
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【ロンドン=阿部哲也】英国ロンドンで16日、日立製作所が生産する高速鉄道の実運転が始まった。ロンドンと各地を結ぶ都市間高速鉄道向けに合計866両を順次納入する大型プロジェクトだ。鉄道発祥の地で「日の丸鉄道」が根付くか。欧州連合(EU)離脱への懸念が広がる現地でも、日本の進出企業の代表格として日立の動向が注目を集める。

英国で日立製の高速鉄道が運行を始めた(16日、ロンドン)

ロンドン随一の玄関口、パディントン駅。午前6時30分(現地時間)、10両編成652席の見慣れない列車がホームに入ってきた。「HITACHI」。多くの乗客が物珍しそうにステップの文字に目を凝らす。30分後、真新しいシートの匂いに満ちた車内の半分近くを乗客で埋め、日立製の高速鉄道1号車は滑らかに発進した。

英西部スウォンジーまでの約300キロメートルを結ぶ。最高時速は201キロメートル。終点まで1時間30分と、従来型の車両より15分間短縮した。電化していない区間も多く走るため、電気とディーゼルのハイブリッド仕様だ。

「時間をかけて営業にこぎ着けた。長い間の苦労と様々な努力が報われた」。鉄道部門の最高執行責任者(COO)を務める正井健太郎常務は振り返る。従来型より客室空間を広げ、静音・低振動設計にした。車内の照明は全て発光ダイオード(LED)と省エネにも配慮。流線形のとがった「顔」は日本人デザイナーが手がけた。日本ならではの「最先端技術と品質」(正井氏)を盛り込んだ。

日本の笠戸事業所(山口県下松市)で半製品の形にして出荷し、英国で組み立てる。総事業費は57億ポンド(約8600億円)。英国北東部にある組み立て工場では1000人が働き、今後も採用を増やす計画だ。ロンドンと北部をつなぐもう一路線とあわせ、2019年までに老朽化した既存車両を日立製に置き換える。「鉄道の日立」を象徴する主力事業だ。

インフラが老朽化する英国では、技術力のある日本企業への期待は大きい。日立は地下鉄などの受注にも参加するほか、英国西部で計画する原発事業も主導する。英国で欧州基準への対応などノウハウを蓄え、出遅れていた欧州開拓の足がかりとする算段だった。

だが英国のEU離脱が決まり、環境は大きく変わった。今後は為替変動や高関税を課せられるリスクが膨らむ。英国を鉄道事業の一大輸出拠点とする戦略は見直しが避けられない。

「当面は大きな影響は出ないとみている。(15年に買収した)イタリアの鉄道車両・信号メーカーと連携し、柔軟な対応を進めていく」。正井氏は強調する。折しも独シーメンスと仏アルストムが鉄道事業を統合することで合意するなど、成長事業と目される世界の鉄道業界は動きも急だ。「鉄道の日立」の真価が問われる。

  ◇   ◇   

ロンドン市内で16日、記者団の取材に応じた日立の正井常務は実運転が始まった高速鉄道車両で神戸製鋼所のアルミ材を使っていることを明らかにした。車体の一部に採用しているが「英国の規格にあった試験を徹底しており、安全性には問題がない。日本のものづくりが信頼性を失うことがあってはならない」と強調した。

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