5人と家族、社会に根付く 拉致被害者、帰国から15年
北朝鮮による拉致被害者5人が帰国してから15日で丸15年を迎えた。5人は家族と共に、日本社会に根付いた生活を送る。一方、日朝交渉は一向に進まず、他の被害者の帰国は実現していない。拉致問題の全容解明には程遠いのが実情だ。
15年前、羽田空港で政府チャーター機のタラップを下りたのは、1978年に拉致された地村保志さん(62)・富貴恵さん(62)夫妻と蓮池薫さん(60)・祐木子さん(61)夫妻、曽我ひとみさん(58)の5人。
地村保志さんは、地元福井県の小浜市役所に勤め、2016年に定年退職した。02年の日朝首脳会談に臨んだ小泉純一郎元首相は今年9月、講演のため小浜市を訪れ保志さんと面会。保志さんは「家族一同で元気にやっています」と報告した。
北朝鮮に残していた3人の子どもは1年7カ月遅れて日本へ。小浜市によると、現在、長女恵未さん(36)は地元の信用金庫に勤務。長男、保彦さん(34)は福井大工学部を卒業後、モーターメーカーに就職した。大阪大外国語学部を卒業した次男、清志さん(29)は、化学メーカーの営業マンとして活躍中だ。
新潟県柏崎市で暮らす蓮池薫さんは、新潟産業大の准教授として韓国語や朝鮮半島の文化を教えながら、拉致問題に関する講演活動にも精力的に取り組む。
子ども2人は親元を離れ、自立した生活を送る。長女、重代さん(35)は大学院に通い、長男、克也さん(32)は早稲田大を卒業後、就職した。 新潟県佐渡市の曽我さんは、元米兵の夫ジェンキンスさん(77)、長女、美花さん(34)との3人暮らし。介護施設で働きながら市内を中心に講演や署名活動を続ける。
9月、地元での記者会見で「周囲の力添えがあり、みんな日本の生活を楽しく送っている」と家族の近況を紹介。保育士の美花さんは、つらいことがあっても「かわいい子どもたちが待っている」と翌朝には元気に保育園に向かうという。次女、ブリンダさん(32)については「結婚し家を離れ、家族と仲良く暮らしている。母親としては安心」。
政府が認定する未帰国の拉致被害者は横田めぐみさん(失踪当時13)ら12人。日朝交渉は停滞し、家族たちは危機感を強める。そんな中、11月上旬に来日するトランプ米大統領とめぐみさんの両親との面会が調整されていることが明らかになり、こうした動きに家族側は期待を寄せる。〔共同〕