2019年8月24日(土)

洋上の実習生「投票できない」 突然の解散、手続きできず

衆院選2017
2017/10/14 20:00
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4月の改正公職選挙法施行で、今回の衆院選から遠洋航海中の実習生がファクスで投票できるようになった。しかし、突然の解散で手続きが間に合わないケースが続出。投票できない実習生が多く出ている。せっかくの洋上投票制度が活用できない結果となり、実習生や学校関係者に困惑が広がっている。

山形県選挙管理委員会が開いた洋上投票の出前講座(8月)=県選管提供

9月4日から11月上旬にかけて、ハワイ近海でマグロはえ縄漁業の実習を行っている高知県立高知海洋高校(土佐市)の「土佐海援丸」。乗り込んだ実習生のうち、専攻科1年の18~19歳の生徒9人は選挙権があるが、今回は投票できない。

洋上投票するには、出港前に選挙管理委員会への届け出が必要。同高は8月、必要な書類を選管から受け取るよう生徒に指示したが、当時は選挙が近いとの認識は低く、実際に取得した生徒はいなかった。

「衆院が解散するとは予想しておらず、強く言わなかった」。竹中治人教頭は後悔する。

9月14日から実習中の島根県立浜田水産高(浜田市)の実習船は、安倍晋三首相が解散を表明した同月25日、米ミッドウェー諸島北方の太平洋を航行中だった。選挙権を持つ生徒が乗船していたが、県教委と協議したうえで、そのまま実習を続けることにした。

酒井実三教頭は「遠洋実習の経験がないと就職活動で不利になる。日本に戻る選択肢はなかった」と振り返る。生徒、保護者から苦情は寄せられていないという。

このほか香川県、大分県の高校で洋上投票できない実習生が出た。

一方、解散後の10月3日に出港した鹿児島県立鹿児島水産高(枕崎市)は、同月11日に洋上投票を実施した。専攻科の生徒16人が無線室で送信用紙に投票先を記入し、ファクスで選管に送った。立候補者一覧や公約は学校がメールで船に届けた。

同高は、7月に必要な手続きを終えていた。立石仁志教頭は「事前準備が功を奏した。無事に投票を終えられてほっとしている」と語る。

洋上投票の認知度はまだ低く、選管はPRに力を入れている。山形県選管は8月、県立加茂水産高(鶴岡市)で出前講座を実施。生徒らはロールプレイング形式で投票の流れを学んだ。

県選管の担当者は「投票送信用紙はいつでも入手できる。今回のように突然、選挙が決まることもあるので、出港前には必ず手続きしてほしい」と訴えている。

手続き煩雑、利用伸びず

洋上投票は選挙期間中に住所地と異なる滞在先で票を投じる「不在者投票」の一種。衆院の総選挙と参院の通常選挙が対象で、2000年6月の衆院選から可能となった。当初は船長や航海士ら「船員」に限定。今年4月の改正公職選挙法の施行で実習生も投票できるようになった。ただ、手続きの煩雑さなどから、実際の投票者数は伸び悩んでいる。

実習生が洋上投票を行う場合は、住民票がある自治体の選挙管理委員会に、地方運輸局が交付する「練習船実習生証明書」を提出。選管から「選挙人名簿登録証明書」を受け取る。

船長が実習生から同証明書を集め、出港前に選管から投票送信用紙をまとめて受け取る。洋上投票の期間は公示日翌日から投票日前日まで。実習生が自ら送信用紙に投票先を記入し、選管にファクスする。

ただ利用は伸び悩んでいる。衆院選の場合、00年6月は小選挙区で762人が投票したが、05年以降は100人前後で推移。直近の14年12月は134人だった。気仙沼遠洋漁業協同組合(宮城県気仙沼市)の三浦一彦専務理事は「高齢化で船員が減っているうえ、手続きが煩雑で活用されていない」と分析する。

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