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南海トラフ、防災策示して 住民「どう動けば」
政府「予知前提」を転換で

2017/10/14 0:09
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政府が南海トラフ巨大地震に関する情報発信を見直したことに対し、被災想定地域で不安の声が上がっている。予知前提の防災を転換し地殻変動など異常時の警戒呼びかけに力点を置くが、情報を受け取る住民らの対応策は定まっていない。22日投開票の衆院選でも防災に議論が割かれる場面は少なく、関係者は「命を守るための道筋を示してほしい」と訴える。

浸水被害に備えて防潮堤に囲まれた佃地域(大阪市西淀川区)

浸水被害に備えて防潮堤に囲まれた佃地域(大阪市西淀川区)

2つの川の中州に位置し、防潮堤が周囲を取り囲む大阪市西淀川区の佃(つくだ)地域。大阪府の被害想定では津波が5メートルの高さで川を遡上し、防潮堤などが壊れた場合、甚大な被害が出る恐れが指摘されている。

住民らでつくる地域活動協議会は学校やビルなど19カ所を避難場所に設定し、高齢者らを担架で安全な高さの階に運ぶ訓練などを重ねてきた。会長の平田房夫さん(74)は「避難の重要性を住民全体が共有している」と胸を張る一方、政府の新たな情報発信は「どう動いていいか分からない」と戸惑いを見せる。

気象庁は9月、巨大地震に関連する可能性がある地震や地殻変動などの異常現象を観測した場合「南海トラフ地震関連情報」として公表することを決めた。政府の中央防災会議から「確度の高い予測は困難」との報告を受けた措置で、「情報は速やかに発信する」(担当者)としている。

11月から始まる情報発信と連動し、内閣府も揺れや津波の被害が想定される地域に家具の固定や避難経路の確認を呼びかける方向で検討している。被害の軽減と早期避難を促す狙いだが、各地域にどう情報を伝達するかや住民らの具体的な行動は決まっていない。

最大で34メートルの津波が想定される高知県黒潮町。区長を務める宮地繁信さん(63)は「前もって警戒できるとはいえ、本震の発生までどの程度余裕があるのか」と実効性に懸念を示す。同町は世帯ごとに避難経路を定めて訓練を重ねており「現時点では揺れたら動くというこれまで通りに対応するしかない」と話す。

「情報を受けても逃げ延びられるか不安」と漏らすのは、和歌山県太地町の区長の花村計さん(43)。県の予測によると、同町には巨大地震発生から数分後に高さ13メートルの津波が押し寄せる。高台の少ない沿岸部で建設を進める津波避難タワー6基のうち、完成したのは3基にとどまる。

整備費の半分を国の補助金で賄うとはいえ、厳しい財政事情もあり1年に1基を建てるのが限界。防災対策を講じなければ町民の7割が犠牲になるとの県の試算もある。花村さんは「人口の多くが失われれば復興もままならない。災害に強い街づくりについて、衆院選や国会でしっかり議論して」と注文をつける。

今回の衆院選で各政党は公約で防災強化を打ち出しているが、大きな争点にはなっていない。津波の到来が予測される大阪市の沿岸部に住む70代の男性は「地震や津波への備えは一地域の問題ではなく、日本全体の課題だ。各政党や候補者は地域の実情を踏まえながら具体的な対策を打ち出してほしい」と話した。

 ▼南海トラフ巨大地震 東海沖から九州沖の太平洋海底に延びる溝状の地形(トラフ)に沿って起きる可能性がある地震。東海、東南海、南海の3つの震源域があり、マグニチュード(M)9級の地震が懸念される。政府の2012年の想定は最大34メートルの津波が発生するとし、死者数は32万3千人。大阪府は約13万人、和歌山県は約9万人の死者が出ると独自に試算している。国は建物の耐震化や早期避難の強化で、24年までに人的被害の想定を8割減らす目標を立てている。

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