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働き方最前線(3)東洋紡 労働時間減らし実質ベア
業務手順見直しも後押し

2017/10/14 2:00
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「共働き社員が増えており、労働時間を減らすべき。工場事務の休日を3日増やしたい」。2016年春、大阪・堂島。本社近くの労働組合本部で東洋紡人事部の射場忠男マネジャーが切り出した。「あわせて本社や支社では所定労働時間を毎日15分短縮する」

工場事務では休日を年3日増やし120日とした(滋賀県大津市の大津医薬工場)

相手は各工場や本支社ごとの単組を束ねる労組連合会の幹部。提案は週休2日制を取り入れた1990年以来、27年ぶりの時短で、楢原誠慈社長からのトップダウンだ。

働き方改革は本来、賃金と密接不可分なテーマだ。働く時間を減らしてもこれまでの支給水準を保つのか否か。維持するには人事・給与制度を変えなければならない会社も多い。

ところが制度の変更には労組があれば合意がいるのが一般的だ。時短や休日取得を社員に勧めても、制度上は有給休暇の取得などで対応する企業が多いのはそのためだ。手取り給与が下がる可能性もあり、最近でも労組側からの時短の提案は少ない。

メーカーには労働時間が長くなりやすい特有の事情がある。東洋紡はエアバッグの生地用の繊維や食品包装フィルムなどを生産している。工場側では受注に合わせ原料調達のタイミングや種類を調整する。夕方入った注文に対応すると生産管理などの担当者は残業になり、帰途につくのが午後8時を回ることも多い。

もともと所定労働時間は「工場事務(約2千人)」「営業など本社支社(約千人)」「3交代の生産現場(約800人)」の順に長い。こうした慣行は長時間労働に敏感な最近の学生に敬遠され、新卒採用にも影響が出ていた。顧客の対応には業界全体をあげた工夫が欠かせない。自力で印象を変えるには制度改定を伴う思い切った取り組みが必要だった。

もちろん労組の合意を得るには配慮もいる。職場の垣根を越えた団結が労組のDNA。特定職場だけの待遇改善には足並みがそろいにくい。特に東洋紡は大正時代から昭和初期に売上高が日本最大の企業だった。労組も戦後の繊維不況の際に国内の労働運動を主導した老舗だ。

18年3月期は連結純利益が過去最高になる見込み。提案は賃金水準は変えず事実上月1万6500円程度のベースアップになる内容とした。

ここまでお膳立てが整うと労組に反対する理由はない。労組幹部が職場ごとに説明して回り昨年9月に受諾した。18年4月からは工場事務の休日を年117日から120日に増やす。本社支社の4拠点は4月から先行して1日の勤務時間を短縮した。

本社の人事部で給与計算を担当する30代男性。慢性的に続いていた午後8時を過ぎる残業が今春以降、ほとんどなくなった。時短にあわせ就業時間は従来の午前9時~午後6時から、午前8時45分~午後5時半に変更した。

人事部には午後になると、給与や課税に関する社員からの問い合わせが増える。午前に多かった会議は電子メールでの周知に一部変更。部内では夕方以降に回していた資料作りを午前中に取り組むスケジュールを勧めている。

共働きのため、自ら仕事の効率を上げ新しい働き方を見つけ、社内にフィードバックするのも役割。最近は午後7時すぎ、1歳の娘と湯船におもちゃを浮かべることが増えたのが、まずは成果だ。

(千葉大史)

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