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ナカシマプロペラ、新素材でスクリュー革命
フォーカス西日本企業 技術生かし人工関節も

2017/10/12 23:30
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 船の推進力を生み出すスクリューの技術革新が進行している。銅合金に代わって、軽くて高強度で燃費向上につながる炭素繊維強化プラスチック(CFRP)がプロペラに使われ始めたのだ。主導するのはナカシマホールディングス(HD)傘下で岡山市に本社を置く船舶用プロペラ大手、ナカシマプロペラだ。

直径10メートル超の大型船用プロペラは世界シェア3割(岡山県倉敷市)

■大幅に燃費改善

 大分県佐伯市の造船所で9月、CFRPプロペラを使った液化石油ガス(LPG)運搬船の進水式が開かれた。三菱ケミカル物流が三菱ケミカルグループの国内拠点に基礎化学品のプロピレンなどを運ぶ内航船だ。

 三菱ケミカルの炭素繊維を使い、このプロペラを製造したのがナカシマプロペラだ。あらゆる船舶用プロペラを製造し、直径10メートル超の大型船用は国内で7割以上、世界で3割のシェアを誇る。

 CFRPは比重が銅合金の5分の1で、船のプロペラに使うと推進効率が高まり燃費改善を見込める。2014年、一般商船で世界で初めて主推進用に装着したケミカルタンカーは「燃料消費が9%減った」(山磨敏夫コンポジット事業部長)。1%の燃費改善に血眼になっている船舶業界では衝撃的な数字だ。

 しなる特性があり、振動や騒音も抑えられる。船員の職場環境が改善することで人手不足緩和の効果も期待できる。

 プロペラ素材は現在、銅合金が主流だが、銅は価格が乱高下しやすく埋蔵量に限りがある。代替素材の発掘は急務だった。CFRPのノウハウを得るため、09年に山磨部長を東京大学大学院に派遣し研究に着手。技術を蓄積し「直径4.2メートルまで対応できる」(山磨部長)ようになった。

 1960年代に業容を拡大した同社が飛躍する契機となったのは皮肉にも80年代の造船不況。大型プロペラを得意とする当時最大手の神戸製鋼所が87年に撤退した。「その顧客をほとんど引き継ぎ」(中島基善社長)首位に躍り出た。ベトナムに工場を設け、フィリピンでも買収先の工場を整え、海外展開を進めた。

 直径5メートル以上の大型プロペラを手掛けるのが玉島工場(岡山県倉敷市)。「すべてオーダーメードの受注生産です」と伊東閑雄・玉島管理グループ次長は説明する。

■仕上げは手作業

 玉島ではまず、砂でプロペラの形をした空間を鋳型として作る。そこに銅合金を流し込んで鋳物を造り、高性能のNC(数値制御)工作機械で加工する。仕上げの研磨は熟練工の手作業。100分の1ミリメートルという精度の高さでプロペラのわずかなゆがみを封じ込める。

 曲面加工や研磨の技術は思わぬ新事業につながる。プロペラ工場を見学した医師から「人工関節に応用できないか」と助言を受けたのだ。プロペラと同様、患者の関節は一人ひとり異なる。輸入品の人工関節は一般の日本人にはサイズが大きいという事情もあった。

 87年に人工関節事業に参入。08年にグループ再編に伴い「ナカシマメディカル」を分社化し、15年には帝人の出資を受けて「帝人ナカシマメディカル」となった。16年10月には手首が動かせなくなった患者の関節と置き換えて使う国内初の「人工手関節」が厚生労働省に承認された。

 造船不況のピンチを耐え、チャンスをつかんで成長した同社も今年で創業91年。100周年を見据え「水面下」のスクリュー革命を推し進める。

■扇風機羽根にも応用
 ナカシマプロペラの技術は扇風機にも生きている。雑貨卸のドウシシャが2012年から販売する高級扇風機は羽根の外縁をすべて曲面にし、位置ごとに厚みを変えるなど形状を工夫。快適な風の追求に協力した。
 創業は1926年。中島基善社長の祖父、善一氏が岡山市で銅合金鋳造の中島鋳造所を設立した。戦時中は陸軍向けのプロペラなどを製造していたが、45年の岡山大空襲で工場が全焼し、46年に再建が始まった。16年11月期売上高は208億円。
(岡山支局長 上野正芳)

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